1970年代より福士則夫は未開拓のジャンルであった打楽器を用い、ユニークな世界を作り上げてきた。様々な素材を叩くことで生まれる無限の音色とリズム、そこに加えられる掛け声やつぶやき——福士の筆先は近作にいくにつれ自由度とユーモアを増していく。また作品ごとに奏者が異なり、新たな才能に出会えるのも楽しい。優れた先行奏者たちとのコラボによって生まれた作品が、上野信一を筆頭に、着実に次の世代に受け継がれ、しかもそれぞれの演奏が作品をしっかりと消化し手の内に入れていることに、驚きと頼もしさを感じた。ソリストクラスの技術を持った若手がこれだけいるのだから、日本は立派な打楽器大国だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年5月号より)
【information】
CD『福士則夫 打楽器作品集/上野信一&フォニックス・レフレクション』
福士則夫:海を渡る鐘の音、樹霊、グラウンド、青海波、赤道のゼフィルス、スコール!、カップル、海流、手のための〈ていろ〉
上野信一&フォニックス・レフレクション(パーカッション)
コジマ録音
ALCD-7288,7289(2枚組) ¥3960(税込)