大分県立美術館が来春開館。館長に新見隆、坂茂が設計

 2015年4月24日(金)、大分県立美術館(以下、OPAM)が開館する。それに先立ち23日、東京都内で記者会見が行われた。登壇者は以下の通り。坂茂(建築家/大分県立美術館 設計)、新見隆(大分県立美術館 館長)、土谷晴美(大分県企画振興部 芸術文化スポーツ局 局長)、平野敬子、工藤青石(コミュニケーションデザイン研究所/大分県立美術館 デザイン)

美術館全景。水平折戸が全開した状態 (C) Hiroyuki Hirai
美術館全景。水平折戸が全開した状態 (C) Hiroyuki Hirai

 OPAMは、2006年に開館した青森県立美術館以来、国内で新設された県立美術館としては9年振り。設計は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞し、世界的に注目を集める建築家・坂茂が担当、坂が手がけた国内初の公立美術館となる。館長は、武蔵野美術大学教授で、これまでにも国内外で数々の展覧会を手がけるなど、美術界の注目を集める異才、新見隆。大分県芸術文化スポーツ振興財団理事も兼任する。また、美術館の建築とコンセプトに適したコミュニケーションデザイナーとして、平野敬子、工藤青石が参加。「五感で楽しむことができる」「自分の家のリビングと思える」「県民とともに成長する」美術館をコンセプトに掲げ、春の『別府アルゲリッチ音楽祭』、秋の『国東半島芸術祭』と、世界的レベルの文化イベントを開催している大分から、世界に向けてメッセージを発信していく新たな拠点となる美術館を目指す。

 坂はOPAMの設計コンセプトとして「2010年のポンピドゥーセンターの分館(ポンピドゥーセンター・メス)のコンセプトが、今回のに近い」とし、大分らしい特色を生かし、隣接するiichiko総合文化センターやOASISひろば21と一体の施設になるようにしてほしいとの県からの要望をふまえ「場所柄、地域性を重視し、大分県の杉を使用するなど、町と一体化し、どこからでも入れる、開かれた美術館」を目指したという。

ポンピドゥー・センター・メスから観た街の風景を見せながら説明する坂茂
ポンピドゥー・センター・メスから観た街の風景を見せながら説明する坂茂
 具体的には、〈OASISひろば21とをつなぐ連絡通路〉〈庇にもなるガラスの折れ戸〉〈壁が自由に動くギャラリースペース〉などで劇場や通りと一体化するなど、これまでの美術館のように、中に入らないと何が行われているか分からないような建物ではなく、通りすがりの人がたまたま外から見て、おもしろそうだからと入れるスペース、開かれた、いろんな用途に使われる場所、大分の財産となるような、市民に愛される場所、となるのを狙いとしている。これについて坂は「世界には類を見ない、フレキシブルなことができる建物」と自信をのぞかせた。
1階アトリウム。写真左の折戸が庇となって憩いの場を創る (C) Hiroyuki Hirai
1階アトリウム。写真左の折戸が庇となって憩いの場を創る (C) Hiroyuki Hirai

新見隆・大分県立美術館 館長
新見隆・大分県立美術館 館長
 新見はOPAMついて「単なるミュージアムだと思われては困る。金沢や青森、瀬戸内、ポンピドゥー、モマのようなものはここにはない。大分にしかない、世界で唯一無二のものがここにある。世界性のある美術館」だとし「新しいタイプのライフスタイルを提案する文化施設」との方向性を示した。

田能村竹田《山陰夜雪図》1834年頃 紙本墨画淡彩 大分県立美術館
田能村竹田《山陰夜雪図》1834年頃
紙本墨画淡彩
大分県立美術館
 開館記念展の第1弾として開催する『モダン百花繚乱「大分世界美術館」ー大分が世界に出会う、世界が大分に驚く「傑作名品200選」』では県が所有する作品と内外の名品とを並べ、今後も「1977年の県立芸術会館開館後の4000点にのぼるコレクションをフル活用、大分県が内包している世界的な文化を示していく」ほか、『『描く!』マンガ展マンガの今、マンガの明日』では「巡回地として受け皿になることはせず、大分から東京に攻めこむ、発信する」との決意を表した。

 また、開館記念展の第2弾として行う『「神々の黄昏」ー東西のヴィーナス出会う世紀末、心の風景(けしき)、西東』では、クリムトと仏像を並べるなど「前代未聞」の展示をし、『シアター・イン・ミュージアム〜ライブ満載、ダンス満載、踊るミュージアム』では、「毎年必ずこの時期、一年に一度、美術館の中がすべて、毎晩不夜城のような劇場になって、ダンスがあり、ライブがある一ヶ月を予定」しているという。

 11月23日から開催される「OPAM誕生祭」では、「五感で楽しむミュージアム」らしく気鋭の作曲家、安野太郎の音楽を美術作品とともに愉しむ企画や、こどもをコンセプトにした「iichikoグランシアタジュニアオーケストラによる演奏会」「子どもたちによる合唱・伝統芸能」、能と現代音楽を結びつけ独自の世界を追及する青木涼子ほかによる「能×現代音楽公演」など多彩なプログラムが披露される。

 なお、開館記念展の初回には、大分県の全小学生6万人を招待するなど、地域に密着した展開を目指す。

 また、関連事業として隣接するiichiko総合文化センターと美術館が一体となって、来年1月から大分県立美術館開館記念『大分オペラフェスティバル』を開催、《フィガロの結婚》《リゴレット》《オテロ》を上演する。《フィガロ》では大分県立芸術文化短期大学と大分二期会が、《リゴレット》では東京二期会が、《オテロ》では大分県芸術文化スポーツ振興財団、東京二期会、びわ湖ホール、神奈川芸術文化財団、京都市音楽芸術文化振興財団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団がそれぞれ協力し大分県立美術館の機運を盛り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

平野敬子、工藤青石(コミュニケーションデザイン研究所/大分県立美術館 設計)による、大分県立美術館のシンボルマークとロゴ。 愛称のOPAMは「Oは太陽を彷彿とさせる円を、Aは天に向かって延びる長体」でデザインされている。
平野敬子、工藤青石(コミュニケーションデザイン研究所/大分県立美術館 デザイン)による、大分県立美術館のシンボルマークとロゴ。
愛称のOPAMは「Oは太陽を彷彿とさせる円を、Aは天に向かって延びる長体」でデザインされている。

◆大分県立美術館竣工記念イベント「OPAM誕生祭」
https://www.opam.jp/topics/detail/99

◆開館記念展・展覧会(予定)
https://www.opam.jp/topics/detail/147

◆県立美術館開館記念『大分オペラフェスティバル』
https://www.opam.jp/topics/detail/135

大分県立美術館(OPAM)
https://www.opam.jp

iichiko総合文化センター
http://www.emo.or.jp

大分県芸術文化スポーツ振興財団
http://zaidan.emo.or.jp