今年創立80周年を迎えた藤原歌劇団が11月1日から3日までの3日間、Bunkamuraオーチャードホールで、プッチーニ《ラ・ボエーム》を上演する。これに先立ち22日、東京都内で記者会見が行われた。
当公演は「藤原歌劇団創立80周年記念公演」と銘打たれると同時に、創立25周年を迎えるBunkamuraと共同主催での上演であり、二重の記念公演として、登壇者からは並々ならぬ意気込みが語られた。
最初に、佐竹康峰・日本オペラ振興会(藤原歌劇団)理事長が「《ラ・ボエーム》は藤原歌劇団の創立最初の演目であり、藤原にとって思い入れの深い重要な演目。この記念公演を成功させ、市民オペラ団体が250以上あると言われる日本のオペラ界の代表として、今後も前進していきたい」と挨拶。升田高寛・東急文化村代表取締役社長は「オーチャードホールは開館から25年の間、藤原歌劇団と関係を深めてきており、今後も『秋の藤原はオーチャード』と定着させられるように、長いつきあいにしていきたい」と語った。
続いて、岡山廣幸・藤原歌劇団総監督は「今年はプッチーニの没後90年でもあり、Bunkamuraの25年、藤原80年と重なった大きな記念の年に《ラ・ボエーム》ができることはうれしい。渋谷は好立地でもあり、この機会に若い人たちにもたくさん観ていただきたい」とアピール。
指揮は日本を代表するオペラ指揮者、沼尻竜典。意外にも藤原歌劇団には初登場とのことで、「藤原歌劇団で指揮するのは届かない夢と思っていたので、今回の機会は本当にうれしい」と思いを述べ、「今回共演する藤原の歌手の方々とはそれぞれご縁があり、稽古場は良い雰囲気で、熱気に包まれている」と手応えを語った。
演出は岩田達宗。2007年に同ホールで初上演されたプロダクションの再演になる。「同ホールには裏方役も含めて長く関わっており、今回も光栄な機会。オペラは生身の人間がやるもので、その熱気を伝えたい」と熱く語った。
1日と3日にミミ役を歌うバルバラ・フリットリは、ご存じの通り世界最高レベルの人気・実力を誇るスター歌手で、当公演の目玉となる存在だ。「今回の藤原歌劇団の招聘をうれしく思う。記念の年ということでより光栄に感じる。日本の演出家の方と仕事をするのは初めてで、20世紀初頭の画家・佐伯祐三の絵画をもとにした舞台という点も大いに興味深く、とても楽しみ。稽古場の環境にも満足しており、これから本番までがんばっていきたい」と本プロダクションへの思いを表情豊かに話し、大いに存在感を示した。
同じく1日と3日にロドルフォ役を歌う世界的テノール歌手、ジュゼッペ・フィリアノーティは、日本の哲学、宗教観に興味を持っているとのこと。「西洋の《ラ・ボエーム》の世界を、敬愛する日本の文化の中で作り上げることをうれしく思っている。文化こそが世界を交流させる唯一のものであり、この機会をこの上なく大切に感じる」と日本への思いも含めて丁寧に語った。
2日にミミ役を歌う砂川涼子が「今までも共演経験のある沼尻さん、岩田さんと、また共に舞台を作り上げることができてうれしい。すばらしい公演になると思います」と言うと、ロドルフォ役で共演する村上敏明も「岩田さん演出の《ラ・ボエーム》は3度目、沼尻さんとは初めてだがとても楽しい。オーチャードホールは学生の頃から聴きに通っていたが、本物の歌手だけが鳴らせる会場だと思っている。ぜひ今回歌声を響かせたい」と述べた。
1日と3日にマルチェッロ役を務める堀内康雄は「記念公演である上に、フリットリさん、フィリアノーティさんと同じ舞台ということもあり、身の引き締まる思い」とコメント。
同じく1日と3日にムゼッタ役を務める小川里美は、10月から藤原歌劇団正団員となり、今回の上演がデビュー公演になるという。2日のムゼッタ役の伊藤晴も、藤原の本公演は初とのことで、そのコメントからは緊張感と意気込みが伝わってきた。
全員のコメントに共通していたキーワードは「楽しさ」と「熱気」。これこそ《ラ・ボエーム》の上演に欠かせない要素であり、記念の舞台の成功を確信させる記者会見となった。
取材・文:林昌英
Photo:M.Terashi & T.Shiroma/TokyoMDE
藤原歌劇団創立80周年/Bunkamura25周年記念公演
プッチーニ:《ラ・ボエーム》
<字幕付き原語上演>
2014/11/1(土)、2(日)、3(月・祝) 15:00 Bunkamuraオーチャードホール
指揮:沼尻竜典
演出:岩田達宗
出演:
ミミ:バルバラ・フリットリ(11/1、3)/砂川涼子(11/2)
ロドルフォ:ジュゼッペ・フィリアノーティ(11/1、3)/村上敏明(11/2)
ムゼッタ:小川里美(11/1、3)/伊藤 晴(11/2)
マルチェッロ:堀内康雄(11/1、3)/須藤慎吾(11/2)
ショナール:森口賢二(11/1、3)/柴山昌宣(11/2)
コッリーネ:久保田真澄(11/1、3)/伊藤貴之(11/2)
ベノア:折江忠道
アルチンドロ:柿沼伸美
パルピニョール:岡坂弘毅
合唱:藤原歌劇団合唱部
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
日本オペラ振興会
http://www.jof.or.jp
044-959-5067