ジョゼ・マルティネズ(スペイン国立ダンスカンパニー芸術監督)

新しいスペイン国立ダンスカンパニー、ここに誕生!

(C)山崎のりあき

(C)山崎のりあき

 パリ・オペラ座エトワールを引退後、母国に戻り、スペイン国立ダンスカンパニー(CND)の芸術監督に就任したジョゼ・マルティネズ。監督として4年目のシーズンを迎えたこの秋、ダンサー総勢40名を率い、待望の来日公演を行う。
 CNDは1979年にクラシックバレエ団としてスタートするが、90年にナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任して以来、クラシックバレエをベースとしつつ、コンテンポラリー作品をレパートリーとするカンパニーへと変化していた。
「ドゥアトの後任には複数の候補がいました。将来的にカンパニーをどう発展させていくべきか、5年間のプロジェクトを設計し、プレゼンテーションをした結果、私が選ばれ、2011年秋に着任しました。
 新たなレパートリーの上演を可能にするため、まずポワント(トウシューズ)を導入しました。CNDでは23年間ポワントを用いていなかったので、ダンサーたちのリアクションもさまざまでした。要求されるテクニックのレベルに達することができないのでは、と不安を訴えるダンサーもいました。クラシックから出発し、コンテンポラリーを踊るようになったダンサーたちにとって、ポワントを履くことは“後退”という受け止め方もありました。ポワントの導入により、パリ・オペラ座のようなクラシック・カンパニーに変貌するのではという懸念もあったようです。
 ダンサーとはよく話し合い、私は決してポワントを強制することはしませんでした。個人の興味や志向の問題ですから、履く履かないは自由です」
 ダンサーの立場も十分に理解し、コミュニケーションをとりながらカンパニーを発展させていこうとするマルティネズの姿勢をダンサーたちも理解した。その結果、多くの女性ダンサーがポワントに取り組み、新たなレパートリーに挑戦した。CNDは、ポワントで踊るコンテンポラリー作品、ネオクラシック、さらに古典作品へとレパートリーを拡大、国内外へのツアーも行うようになった。
「レパートリーには3つの柱があります。ひとつはスペインの振付家、若手と中堅の作品、そしてクラシック、ネオクラシック作品群。日本公演では、もうひとつの軸である偉大な現代振付家の作品を上演します。コール・ド・バレエの素晴らしい資質をご覧いただける作品が2つ。キリアンの『堕ちた天使』においては、女性の繊細さを、イスラエルの振付家ガリーリの『sub』では男性の活力を観ていただきます。
 フォーサイス振付の『ヘルマン・シュメルマン』は、カンパニーのポワント回帰を象徴する作品です。観客とダンサーの関係を問い直す『マイナス16』は、さまざまなカンパニーで踊られていますが、私たちの版は独特です。振付家ナハリンがマドリードに指導に来たときに、ダンサーたちを高く評価し、インプロヴィゼーションをベースに新たに振付けた部分があるのです。全体の構成は変わりませんが、CNDオリジナル版と言ってよいものです。そして『天井桟敷の人々』、私自身の過去、すなわちオペラ座での思い出も少し挿入しました。日本公演のために一部を再構成します」
 マルティネズ着任以前、スペイン出身のダンサーは4名だったが、今や4割をスペイン出身のダンサーが占めている。
「長らくスペインにはクラシックを踊れるカンパニーがなく、ダンサーたちは国外に踊る場所を求めざるを得ませんでした。私の2シーズン目以降、クラシックを志向するスペインのダンサーたちが、CNDに入団するようになりました。彼らが国内で仕事を見つける可能性が生まれたのです。コンテンポラリーのレパートリーも拡張しながら、将来的には古典大作も上演したいと考えています。
 現在CNDのダンサーの国籍は、14ヵ国に拡がっています。日本公演全体を通して、さまざまな教育ベースを持ったダンサーたちの多様性とその美質をご覧いただけるでしょう。私自身も久しぶりにダンサーとして舞台に立つ予定です。日本は私にとって特別な国なのですから」
取材・文:守山実花
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

スペイン国立ダンスカンパニー
『墜ちた天使』振付/イリ・キリアン
『ヘルマン・シュメルマン』振付/ウイリアム・フォーサイス
『マイナス16』振付/オハッド・ナハリン
『天井桟敷の人々』よりパ・ド・ドゥ 振付/ジョゼ・マルティネズ
『Sub』振付/イジック・ガリーリ

11/30(日)15:00 愛知県芸術劇場
問:愛知県芸術劇場052-971-5609
http://www.aac.pref.aichi.jp
12/5(金)19:00、12/6(土)15:00 KAAT神奈川芸術劇場ホール
問:チケットかながわ0570-015-415

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