藤木大地(カウンターテナー/横浜みなとみらいホール プロデューサー 2021-2023)

有終の美を飾る、豪華競演が実現

(c)平舘 平

 横浜みなとみらいホールの「プロデューサー 2021-2023」として活動してきた、カウンターテナーの藤木大地。国際的に活躍する現役歌手が、公共ホールの多彩なコンサートの制作を手掛けるという、これまでにない先進的な取り組みを進めて1年半が経った。任期2年の終了まで残すところ半年となる。

 「横浜という街と、そのシンボルであるホールを愛し、一緒に盛り上げてくれる演奏家の皆さんと公演を作り上げてきました。就任以前からプロデュース業には関心がありましたが、責任あるポストに就いて、自分が演奏家だからこそ持てる多角的視点を一層大切にしています。2つの柱として、全国の音楽事業者とのネットワークをつくること、そして若い音楽職業人の育成のために教育機関との連携を図ることを進めてきました。人と人を、つなぎ、むすび、そしてのこす。今後もホールの財産として活かしてもらえるような活動を意識しています」

“みなとみらい”の名を全国へ

 ヴァイオリンの成田達輝、辻彩奈、周防亮介、ヴィオラの川本嘉子、チェロの辻本玲、ピアノの萩原麻未など、豪華アーティストたちと展開する「みなとみらいクインテット」の各地での公演や、洗足学園音楽大学の学生たちと制作した音楽劇《天岩戸(あまのいわと)》に、藤木の思いは結実した。

 「みなとみらいクインテットの取り組みは、ホールの名を冠したアンサンブルが各地を巡ることで、地方からも横浜への関心や親しみを持っていただくことをねらいとしています。小編成ゆえにハーモニーのバランスをシビアに追求し、精緻な音楽作りが求められる室内楽。歌手はほとんど経験しない領域なので大変勉強になります。今後はいろいろな歌手の方にも挑戦していただきたいです」

横浜を「歌の都」に

 春から夏にかけては、プロデュースのクライマックスとも言える公演が控えている。一つは4月21日の「横浜うたまつり」だ。中川晃教(シンガーソングライター/俳優)、中村恵理(ソプラノ)、サラ・オレイン(アーティスト)といった歌手陣と共演し、オーケストラには阪哲朗指揮、山形交響楽団を迎え、ジャンルレスに歌の魅力を届ける。

 「歌手は僕が本当に上手いと思う仲間たちで、それぞれ十八番のソロとデュエットを歌います。中川さんには代表作、ミュージカル 『モーツァルト!』から〈僕こそ音楽〉、中村さんにはロンドンでも歌われたばかりの《蝶々夫人》、サラ・オレインさんには『レ・ミゼラブル』の名曲を披露していただきます。僕は、マーラーの『子どもの魔法の角笛』から〈原光〉を歌います。指揮の阪さんは僕がイタリア留学時代にもお世話になり長いお付き合いのあるマエストロ。山響のみなさんには『キャンディード』序曲などオーケストラだけの作品も演奏していただきます。盛りだくさんの内容です」

熱い想いを引き継ぐ

 7月31日の「みなとみらいアコースティックス 2023」では、次期プロデューサーの反田恭平、そして務川慧悟という輝かしいピアニストとステージを彩る。

 「3人とも2012年の日本音楽コンクール優勝者同期という共通点があり、もともと彼らと一緒に何かをやろうと決めていたのです。反田さんが次期プロデューサーということになり、バトンタッチを象徴するような公演ともなりますね。務川さんは、実はご自身でも歌うほど歌曲が大好きなんですよ。彼とはシューマンを、反田さんとはウィーンにゆかりある作品を取り上げたいと思っています。もちろん反田さんと務川さんのソロや、2台ピアノによる演奏も、ぜひ楽しみにしていただきたいです」

 藤木プロデュースのみなとみらいの集大成に、ぜひご注目を!
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2023年4月号より)

横浜うたまつり 
2023.4/21(金)18:30


みなとみらいアコースティックス 2023 
7/31(月)19:00 
5月中旬発売
横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp

他公演 
7/29(土) 岐阜/バロー文化ホール(多治見市文化会館)(0572-23-2600)