アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

伊仏の文化的交流を示唆する巧みなプログラム

アンドレア・バッティストーニ (c)上野隆文

 バッティストーニは東京フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者として、7度目のシーズンを迎えた。3月の定期公演では、イタリアとフランスの作品を組み合わせたプログラムを披露する。

 プログラム前半は、これら両国による文化的な交流を示唆する2曲。ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」は、歌劇《ベンヴェヌート・チェッリーニ》からのモティーフで作られた管弦楽曲だ。後半のテンポの速い部分には、イタリアの民族舞踊であるサルタレロのリズムを取り入れるなど、ローマ賞を受賞したベルリオーズがイタリア留学で得た経験も生かされている。

 2曲目は、カゼッラの狂詩曲「イタリア」だ。今年生誕140年を迎えるカゼッラは、パリ音楽院で学んだイタリア器楽運動の先導者。オペラが偏重されていたイタリアのなかで、交響曲やピアノ曲といった分野で頭角を現した。この「イタリア」は、1910年のパリ万博のために書かれた。あの「フニクリ・フニクラ」をはじめ、南イタリアの民謡の旋律をふんだんに引用し、カゼッラならではの華麗なオーケストレーションで聴かせてくれる。

 そして、この日のメインとなるのは、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(オルガン:石丸由佳)だ。19世紀のフランス音楽の代名詞たるシンフォニーをバッティストーニが東京フィルで振るのは、意外にも初めて。成熟したコンビネーションが燦然たるスペクタクルを築いてくれるだろう。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年3月号より)

第153回 東京オペラシティ定期シリーズ
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