ペトル・ヴロンスキー(指揮) 読売日本交響楽団

今や稀なる重厚・壮大なマーラー

ペトル・ヴロンスキー (C)読売日本交響楽団
ペトル・ヴロンスキー (C)読売日本交響楽団

 マーラーは、15歳までチェコの町イフラヴァで暮らした。それゆえ同国の指揮者には、シンパシーに満ちた演奏史がある。ペトル・ヴロンスキーも、クーベリック、ノイマン、マーツァルといった系譜に属するマエストロだ。2011年5月(大震災の直後!)、ヴロンスキーはマーツァルの代役で読響に登場し、交響曲第5番を指揮。細部まで血を通わせた壮大かつ壮絶な名演で皆を驚嘆させ、“次のマーラー”への期待を強く抱かせた。この10月、それが実現する。
 1946年プラハ生まれのヴロンスキーは、ブルノ国立フィル、ヤナーチェク・フィル等の首席指揮者を歴任したほか、チェコ・フィル、ドレスデン・フィル、サンクトペテルブルク・フィル等に客演し、プラハ国立歌劇場はじめオペラでも活躍している名匠。今回は、マーラーやドヴォルザークで喝采を浴びて以来、3年半ぶりの読響共演となる。
 メインは交響曲第1番「巨人」。少年時代にチェコで触れた自然、民謡、軍楽隊の体験や、愛、悲しみ、情熱、絶望など、青年マーラーの多様な思いが投影された作品だけに、とりわけ全ての音に意味をこめるヴロンスキーには打ってつけの1曲だろう。彼は、同曲をイフラヴァのマーラー音楽祭で指揮した実績もあるし、壮麗でスケールの大きな読響のサウンドも強い味方となる。前半がスーク若き日の佳品である弦楽セレナードなのも嬉しい。これは義父ドヴォルザークの同名曲を思わせる温かく抒情的な音楽。ここは本場の名指揮&一流オーケストラの弦楽演奏で耳にする稀少な機会だ。
 前回感激した人は再度、逃した人は今度こそ、ヴロンスキーの濃密な世界を体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)

第575回 サントリーホール名曲シリーズ
10/17(金)19:00 サントリーホール
第170回 東京芸術劇場マチネーシリーズ
10/19(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
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