黒川侑・佐藤晴真・阪田知樹 ピアノトリオVol.3

気鋭の若手奏者たちが奏でる室内楽の傑作三選

左より:黒川侑、阪田知樹、佐藤晴真

 京都府立府民ホール“アルティ”で、黒川侑が佐藤晴真と阪田知樹に声をかけて結成されたピアノトリオが、鮮烈な演奏で注目を集めている。その3回目の演奏会は、ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスの傑作を揃えたプログラムで開催される。

 ヴァイオリニスト黒川侑は、今や世界的に活躍しており、先頃NHK-FMでも流れた広上淳一と京都市交響楽団とのプロコフィエフの協奏曲は、鋭い感性が光った名演であった。チェリスト佐藤晴真は、超難関のARDミュンヘン国際音楽コンクールで優勝。3月のリサイタルでの静謐な武満徹「オリオン」と激しく求心的なショスタコーヴィチのソナタが強く印象に残った。ピアニスト阪田知樹は、リスト国際ピアノコンクールの覇者であり、近年ベートーヴェンやシューマンなどドイツ音楽の演奏で高い評価を得ている。

 そんな3人のトリオが悪いはずがない。ハイドンの「ジプシー」トリオは、古典的な作風の中では、珍しく民族色の前面に出た傑作である。ベートーヴェンの「幽霊」は緩徐楽章の奇怪な雰囲気からの愛称だが、激しい冒頭楽章と軽快な終楽章は、中期の充実したソナタ形式で書かれ、とても優れた三重奏曲だ。ブラームスの第1番は若書きの瑞々しい魅力作であり、ロマンティックで初々しい情感に溢れている。しかも36年後に改訂されていて、晩年の熟達した書法も同時に聴くことができる。これら名作3曲で、若きヴィルトゥオーゾが火花を散らす演奏が今から楽しみだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2022.12/10(土)14:00 京都府立府民ホール“アルティ”
問:京都府立府民ホール“アルティ”075-441-1414 
http://www.alti.org