チェコの実力派が自国の傑作でみせる手腕
チェコの誇る俊英指揮者ネトピルが3年ぶりに読響の指揮台へ帰ってくる。前回、2019年の読響への初登場では、スークの大曲「アスラエル交響曲」を指揮して鮮烈な印象を残した。大音量でも音は荒れることなく、響きは麗しく、みずみずしいまま。シャープな造形に加え、洗練を尽くした演奏だった。
今回、読響との共演では3種のプログラムを指揮する。そのなかの一つ、チェコ生まれの指揮者としては外せないレパートリー、ドヴォルザークの「新世界」交響曲をメインとした演奏会が東京芸術劇場で行われる。
プログラムは、マルティヌーの歌劇《ジュリエッタ》組曲という珍しい曲から始まる。もとになっているのは夢と現実が交錯するSF的要素も入ったオペラ。作曲家の没後に、ヴォストルシャークがオーケストラ組曲として編曲した。劇的なニュアンスに満ちたこの曲、劇場経験も豊かなネトピルの手腕が存分に生かされるはずだ。
そして、昨年ARDミュンヘン国際音楽コンクールで優勝した岡本誠司を迎えて、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。作品の本質をストレートに伝えるヴァイオリニストが、モーツァルトに実直に向かい合う。
後半は、ドヴォルザークの交響曲第9番 「新世界から」。若き指揮者の研ぎ澄まされた感性が、このよく知られた曲でどのように発揮されるのか。立体的にバランスを図り、そして旋律を爽やかに歌わせた、新しい「新世界」を期待したい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2022年11月号より)
第252回 土曜マチネーシリーズ
2022.11/26(土)
第252回 日曜マチネーシリーズ
11/27(日)
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp