柴田美穂を中心とする“ピアノ三重奏”曲集。モーツァルト「ケーゲルシュタット」は、クラリネットが雄弁に語り、ヴィオラと絶妙に絡む。メヌエットもロンドも楽しい。ショパンのピアノ三重奏曲は、チェロにヴィオラが加わる。18歳の若きショパンが真面目に取り組んだ4楽章の労作。緩徐楽章の歌は美しく、弦の柔らかな表情がいい。ピアノは全曲の至る所で煌めいている。シューマンの「おとぎ話」ではロマンティックなポエジーが、そこここで香り立つ。フォーレのピアノ三重奏曲は、クラリネットが甘美なメロディを歌い、入り組んだテクスチュアに、晩年の明鏡止水の境地が味わい深く語られる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『素晴らしき仲間と共に/柴田美穂』
モーツァルト:ケーゲルシュタット・トリオ/ショパン:ピアノ三重奏曲/シューマン:おとぎ話/フォーレ:ピアノ三重奏曲 他
柴田美穂(ピアノ)
武田忠善(クラリネット)
大野かおる(ヴィオラ)
ドミトリー・フェイギン(チェロ)
収録:2024年5月、東京オペラシティ リサイタルホール(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-8018-9(2枚組) ¥4400(税込)