後期ロマン派の多面性をたっぷりと
山田和樹が若手指揮者陣のトップを快走している。スイス・ロマンド管を率いての来日公演は大成功。演奏だけではなく、独自の選曲の評価も高かった。来シーズンにはモンテカルロ・フィルへの首席客演指揮者就任、パリ管との「火刑台上のジャンヌ・ダルク」などに加え、日本フィルとのマーラー・ツィクルスもスタート。先日、同団正指揮者任期延長の発表もあったばかりだ。
選曲の独自性や楽曲の聴きどころを的確に見抜き自分色に染め上げる力など、山田の美質にはいろいろあるが、正直に言ってここまでの進撃ぶりは、筆者も予想はしていなかった。山田には音楽のフレッシュさだけでなく、ステージの和をも作り出す不思議なオーラがあるから、観客も知らず知らずに魅了されてしまうのだろう。勢いに加え、ステージを重ねることで変わっていく余地を残しているところも期待大。
そんな魅力満載の“ヤマカズ”に、直近で触れる機会が日本フィルの9月定期。今年はR.シュトラウス生誕150年ということで、「ばらの騎士」ワルツ第1番と「ドン・キホーテ」が組まれおり、後者にはベルリン放送響首席ヴィオラのパウリーネ・ザクセが日本フィル・ソロ・チェロの菊地知也と共演する。
もう1曲、シェーンベルクの「浄められた夜」は月下に背徳と愛を濃密に語らう男女の話。饒舌に、時にはユーモアを交えて物語るR.シュトラウスに対し、内容も作風も対照的だが、文学と深く結びついた後期ロマン派の多面性をたっぷりと味わってもらおうという心憎い趣向だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
第663回 東京定期演奏会
9/12(金)19:00、9/13(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp