東京芸術劇場コンサートオペラ Vol.2 《ドン・カルロス》

強力な布陣で臨むパリ初演版


 ヴェルディ中期の傑作《ドン・カルロス》(イタリア語では「ドン・カルロ」)に多くの異稿があるのは、オペラ・ファンなら少なからずご存知だろう。現在上演の中心は、1880年代に完成したイタリア語による4幕あるいは5幕の版だが、今回はフランス語による1867年のパリ初演版が日本初演される。のちにカットされたり新たに加えられたりした部分がリセットされているわけで、たとえばオーケストレーションなど、作曲家の十数年間にわたる書法の変遷の混在も解消されるし、たとえ旋律が同じでもイタリア語訳の関係でフレージングが変わった部分など、聴き知った《ドン・カルロ》とは異なる音楽も聴こえてくる。
 フランスのグランド・オペラ形式に則って書かれた大規模なこの作品は、5人の主役級歌手を必要とする。今回はフィリップ2世(バス)にカルロ・コロンバーラを招聘、ドン・カルロス(テノール)に佐野成宏、ロドリーグ(バリトン)に堀内康雄、エリザベート(ソプラノ)に浜田理恵、エボリ公女(メゾ・ソプラノ)に小山由美と盤石の布陣。さらに、宗教裁判長(バス)の妻屋秀和も加えた、めったに聴けない男性低声歌手の豪華共演が楽しめるのもこの作品の聴きどころだ。指揮は、「パリ初演版にこそ、台本に純粋に向き合ったヴェルディの姿が垣間見える」と意気込みを語る佐藤正浩。プロオーケストラメンバーによるザ・オペラ・バンドを率いて、登場人物たちの心の奥を巧みに描き込んだスコアから、理想的な音楽を引き出してくれるにちがいない。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)

9/6(土)15:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
http://www.geigeki.jp