[サラダ音楽祭]トーキョー・メット・サラダ・ミュージック・フェスティバル 2022

歌って、聴いて、踊る、“誰でもOK!”の音楽祭

 2018年に誕生した「サラダ音楽祭」。そのメインプログラムが9月18日と19日、東京芸術劇場を中心とした池袋エリアで今年も開催される。この音楽祭、最初にその名を聞いたときには「音楽祭になぜサラダなのか」と不思議に思ったものだが、これにはちゃんと理由がある。「Sing and Listen and Dance!! 」これを略して「SaLaD」。つまり、歌う、聴く、踊るをコンセプトに、子どもも大人もあらゆる人たちが参加できる音楽祭にしようというモットーなのだ。ヒアリングループ(聴覚支援システム)や点字プログラムによるユニバーサル対応、託児サービスも用意される。

 中心となる公演は「OK! オーケストラ」「音楽祭メインコンサート」「子どものためのオペラ『ゴールド!』〜少年ヤーコプとふしぎな魚のものがたり(日本語上演)」の3つ。

ラフマニノフの名曲をダンスと楽しむステージ

 まず「OK!  オーケストラ」(9/18)は0歳から入場OKというだれでもウェルカムなコンサートだ。本フェスティバルのスーパーバイザーを務める大野和士が東京都交響楽団を指揮して、すぎやまこういちの交響組曲「ドラゴンクエストV」より〈序曲のマーチ〉、久石譲の「となりのトトロ」より〈さんぽ〉(独唱:栗林瑛利子)、ブラームスのハンガリー舞曲第5番・第6番ほかを演奏する。さらに近藤良平率いるダンス集団コンドルズが加わって、普段のコンサートとは一味違ったコラボレーションを楽しめるのも魅力。お子さんのおむつ替えやミルクのための途中入退場も可能。子どもが泣き出したらいつでもロビーに出ることができる。

 「音楽祭メインコンサート」(9/19)では、大野指揮&都響が、ソプラノの前川依子、メゾソプラノの松浦麗、新国立劇場合唱団とともにメンデルスゾーンの劇付随音楽「夏の夜の夢」を披露する。序曲や結婚行進曲はよく耳にするが、全体を通して聴ける機会は貴重。さらにこの公演では金森穣の演出・振付によるNoism Company Niigataのダンスが見どころとなる。ダンスが入るのはペルトの「フラトレス〜弦楽と打楽器のための」とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番より第2楽章。音楽とダンスの相乗効果がこれまでにない新鮮な体験をもたらしてくれることだろう。ピアノは江口玲。豪華出演者陣がそろう。

グリム童話をもとにした子どものための本格オペラ

 「子どものためのオペラ『ゴールド!』」は昨年も上演されて好評を博した。副題は「少年ヤーコプとふしぎな魚のものがたり」。グリム童話が題材となっており、少年が海で不思議な魚を捕らえるところから物語が始まる。魚は少年に海に戻してくれたらなんでも願いを叶えると約束する…。テーマは欲と幸せ。オペラといっても、出演者はソプラノの柳原由香と打楽器の池上英樹のみ。このふたりが大活躍して物語の世界を雄弁に伝える。レオナルド・エヴァースの音楽は子どもにも大人にも鑑賞可能な現代人の感性に即したもの。観客の子どもたちにも参加を促す場面があり、飽きさせないように工夫が凝らされている。2012年にオランダで初演されて以来、欧州各地でも上演されているすぐれた作品だ。演出は菅尾友。

 これら3公演以外にも、都響メンバーによるマスタークラスや、ダンスや歌、楽器作りをテーマとしたワークショップ、池袋の街中にて無料で楽しめるSaLaDミニコンサートなど、多彩なプログラムが用意される。また、スペシャルプログラムとして、8月23日に福生市民会館、24日にルネこだいらで藤岡幸夫指揮&都響によるオーケストラ公演が開催される(入場無料、事前申込)ほか、多摩・島しょ地域での室内楽公演も予定される。音楽祭を通して、多くの人があらためて音楽の豊かさと可能性を実感してくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年8月号より)

メインプログラム 
2022.9/18(日)、9/19(月・祝) 東京芸術劇場、池袋エリア
スペシャルプログラム 
2022.8/23(火) 福生市民会館 8/24(水) ルネこだいら
問:サラダ音楽祭事務局03-5330-3080 
https://salad-music-fes.com
※フェスティバル、発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。