杜の都の受賞者たち、待望のリサイタル
3年毎に開催される仙台国際音楽コンクール。今年は第8回が開催され、6月にすべてのラウンドが終了し、日本からの出場者である中野りな(ヴァイオリン)が優勝、太田糸音(ピアノ)が第3位に入賞したことも話題となった。このコンクールにはピアノとヴァイオリンの2つの部門があり、両部門ともソリストとしての実力がもっとも試される「協奏曲」が課題曲の中心に据えられている。世界にも類例を見ないコンクールだ。セミファイナル以降はコンクールのホストオーケストラである仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演が課されているが、ヴァイオリン部門のセミファイナルでは、さらにオーケストラのコンサートマスターとして演奏するという課題が設けられており、独自の試みが注目を集めている。
このコンクールはピアニストのユジャ・ワンやヴァディム・ホロデンコ、ヴァイオリニストのアリョーナ・バーエワや成田達輝といった世界的アーティストを輩出しており、また審査委員にもギドン・クレーメルやジャック・ルヴィエなど海外の一流演奏家が名を連ねている。ソリストとしてはもちろん、アンサンブル奏者としての実力も試されるコンクールであり、入賞者は存在感の強いアーティストとして印象的な活躍を見せている。そんなコンクールで最高位を受賞し、活躍を続けるピアニストとヴァイオリニストの演奏を楽しめるリサイタルの開催が決定した。いずれも前回(第7回)の最高位入賞者によるもの。2020年から二度の延期を経ており、待ちわびていた方も多いだろう。
まずはチェ・ヒョンロクのピアノリサイタルだ。ヒョンロクは、アジア・パシフィックショパン国際ピアノコンクール第3位、ブゾーニ国際ピアノコンクール・ファイナリストなど数々のコンクールで実績を重ね、19年に第7回仙台国際音楽コンクールで優勝。昨年はショパン国際ピアノコンクールの本大会に出場し、自身の世界観を強く印象付ける演奏で多くの聴衆の心を掴んだ。今回彼が演奏するのは、ショパンとラヴェルということはそのままだが、20年に予定されていたプログラムから変更されている。ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」「夜のガスパール」、ショパンの「24の前奏曲」といった、彼の繊細で透明感のある音色、故・野島稔審査委員長(第7回ピアノ部門)に「すべてのラウンドで安定していた」と言わしめた精緻な技術、表現力をより感じられる曲目となった。
ヴァイオリン・リサイタルに出演するのはシャノン・リー。ナウムバーグ国際ヴァイオリンコンクール第2位(2018年)、インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクール入賞(18年)をはじめ、エリザベート王妃国際音楽コンクール第4位(19年)など、数々の国際コンクールで入賞。ハイフェッツ国際音楽祭など様々な音楽祭にソリストや室内楽奏者として出演。第7回仙台国際音楽コンクールでは最高位(第2位)を獲得した。今回のリサイタルプログラムは、バルトークにブラームスのソナタをはじめ、イザイにエルンスト、武満徹と、多様な作曲家の作品が並ぶ。堀米ゆず子審査委員長(第7回ヴァイオリン部門)に「本当に音楽的」と評された表現力を存分に味わえるプログラムである。
すでにアーティストとして目覚ましい活躍を見せる二人の2年越しのリサイタル。ぜひ耳を傾けてほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年8月号より)
チェ・ヒョンロク ピアノリサイタル
2022.9/9(金)19:00 浜離宮朝日ホール
9/11(日)14:00 日立システムズホール仙台 コンサートホール
シャノン・リー ヴァイオリンリサイタル
9/19(月・祝)14:00 日立システムズホール仙台 コンサートホール
9/21(水)19:00 浜離宮朝日ホール
問:仙台市市民文化事業団音楽振興課022-727-1872
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