作曲家の視点が浮かび上がらせるピアノ音楽の果てなき可能性
ピアニストとして、そして作曲家として、数多くの現場にかかわってきた田中翔一朗が、独自の視点から選んだこだわりのプログラムをひっさげて「B→C」に登場。
プログラムはバッハをベースにおきつつ、20世紀(ドビュッシー、スクリャービン、ラフマニノフ、メシアン、ノアゴー)のピアノ音楽の水脈を織り込みながら、21世紀現在の創作の最前線を幅広く紹介するものとなっている。ドイツのボロフスキ、オーストリアの女流ノイヴィルト、フランスの故ベルトランといった中堅世代の近作の他に、長老カーターの最晩年の作、そして我らが酒井健治(今回最も取り上げたかったと田中は言う)まで、多彩を極めた内容だ。これらの小品を通じてピアノの書法の歴史的な展開だけでなく、“旅”、“感情—構造”、“ネットワーク”といった作品相互間から生まれるテーマも伝わってくるはずだ。弾き手としての田中のテクニックはもちろん、作り手としてみた作品解釈、さらにはそれを演奏会体験へと昇華する手並みを楽しみたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年6月号より)
2022.6/14(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp