群馬交響楽団 定期演奏会 2022

前期シーズンの創意溢れるラインナップ

 2019年に開館した高崎芸術劇場を拠点に充実した活動を続ける群馬交響楽団(群響)。2022/23シーズンの前期も創造性に富んだ公演が並ぶ。

 4月は、指揮界の重鎮・秋山和慶が北欧三大作曲家の作品を披露する。最初のシベリウスの「春の歌」は、ふくよかなロマン派風の音楽で、貴重な生体験となる。次のグリーグのピアノ協奏曲は、北欧の同分野随一の名曲。今回は2019年ロン゠ティボー゠クレスパン国際コンクール優勝の実力派・三浦謙司が、フレッシュなソロを奏でる。後半のニールセンの交響曲第4番「不滅」は、生への希求が込められた劇的な音楽で、二人のティンパニ奏者のバトルが大注目。むろんいずれも、経験豊富な名匠・秋山のリードに熱視線が注がれる。

 5月は、前音楽監督の大友直人が、生誕150年を迎えた近代イギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズ・プロを聴かせる。純粋器楽交響曲の第5番と第9番がバス・テューバ協奏曲を挟む構成は実に秀逸。第5番は穏やかで美しく、第9番は沈鬱な中にも希望を湛えた音楽ゆえ、抒情美を満喫しつつ安らぎを得られるし、両曲を併せて聴ける機会など他にない。テューバ協奏曲は同楽器の大看板曲。ここは群響奏者・松下裕幸の妙技を堪能したい。イギリス音楽に造詣が深い大友が紡ぐジェントルな音楽……とても楽しみだ。

 6月は、日本の各楽団から引く手あまた—特に昨年末から今年初めは大活躍! —のイタリア人指揮者ガエタノ・デスピノーサが腕を振るう。前半はフランス人作曲家のスペインもの。リズムが弾むシャブリエの狂詩曲「スペイン」に、明朗なラロの「スペイン交響曲」が続く。後者では進化著しいヴァイオリニスト、南紫音の艶やかなソロへの期待も大きい。後半のプロコフィエフの交響曲第5番は、シリアスにして機知に富んだ、作曲者渾身の名作。ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターから転向したデスピノーサは、表現が明解で語り口が巧い。今回の3曲はその持ち味にピッタリだ。

 7月は、1993〜2008年の音楽監督時代に群響を飛躍させた高関健が、近代ロシアの対照的な2曲で魅せる。まずはラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。ロマンティシズムと超絶技巧が同居した本作は、ソロを弾く日本の代表格・清水和音も得意とするだけに、高関が導くバック共々、濃密な音楽が展開されるに違いない。後半はストラヴィンスキーの「春の祭典」。20世紀音楽の道標となったこの激烈な作品は、高関が音楽監督の時に何度か取り上げた十八番だが、熟達・深化著しい今の彼がいかなる演奏を聴かせるか? まさに興味津々だ。

 どの公演もすこぶる魅力的。ここは続けて足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年4月号より)

第577回定期 2022.4/23(土) 
第578回定期 5/14(土)
第579回定期 6/25(土) 
第580回定期 7/23(土)
各日16:00 高崎芸術劇場
問:群馬交響楽団事務局(チケット専用)027-322-4944 
http://www.gunkyo.com