鈴木優人(チェンバロ)& 鶴田洋子(フラウト・トラヴェルソ)

J.S.バッハとその周辺を巡る音楽の旅

 チェンバロの鈴木優人とフラウト・トラヴェルソの鶴田洋子が、浜離宮朝日ホールのランチタイムコンサートで久しぶりに共演を果たす。プログラムは「J.S.バッハを巡るさまざまな作曲家」の作品が組まれている。

鈴木「前半にフローベルガーとC.P.E. バッハを組んでいますが、フローベルガーはバッハのルーツというか原流ともいえる作曲家で、非常に描写的で具象的な作品を書いた人です。インスピレーションに富み、多彩なアイディアをそのまま音楽で表現している。一部の曲ではその面白さを解説を交えながら演奏したいと思います。C.P.E.バッハはJ.S.バッハの息子で、ドイツ・ポツダムのサンスーシ宮殿でフルートを愛好したフリードリヒ大王に仕え、フルートが輝くような作品を生み出しています」

鶴田「二人でC.P.E.バッハを演奏するのは初めてですが、滅多に演奏されない作品ですし、今後も演奏したい作品が多いですね」

 鈴木は小学6年生から高校時代までフルートを習っていた。それゆえ、鶴田とのリハーサルでは指使いなどの細かいところのアドバイスをすることもあるという。

鶴田「目からウロコという指摘が多いんです。彼は“疾風怒濤”の性格で、瞬発力がすごい。私はゆっくり慎重に考える方で、用意した引き出しから順次アイディアを出していくタイプです」

鈴木「僕が100メートル走で彼女は1500メートル走という感じかな(笑)。性格は正反対だからこそ異なった解釈の演奏が生まれ、それが融合していく面白さがあります。僕は疾風怒濤といわれますが、自分が興奮することなく、聴き手を興奮させたいですね」

 後半はオトテールの組曲が登場する。

鶴田「フルートやフラウト・トラヴェルソ奏者にとって、オトテールは最も重要な作曲家。教則本を書いたことでも知られていますが、その本と音楽が密接に結びついているところが興味深い。絵に残されているオトテール・フルートと呼ばれるちょっと長い楽器があるのですが、私も最初にこのレプリカで吹き、深々とした良い音に魅了されました」

鈴木「続いてラモー、クープランのよく知られた作品を演奏し、当時のフランスとドイツの交流にも目を向けたい。最後は、J.S.バッハのソナタで両楽器のアンサンブルを存分に堪能していただきたいと思っています」

 音響のよさで定評のあるホールでのデュオ。18世紀の音楽による世界旅行にいつしか心が浮遊し、かの地へと自然に運ばれて行きそう。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2021年12月号より)

浜離宮ランチタイムコンサートvol.210
鈴木優人(チェンバロ)&鶴田洋子(フラウト・トラヴェルソ)
2022.1/21(金)11:30 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/