大阪4オーケストラ活性化協議会
2022-2023シーズンプログラム共同記者発表会

左より:山下一史、尾高忠明、藤岡幸夫、飯森範親

 11月17日、大阪府豊中市のセンチュリー・オーケストラハウスで大阪4オケの2022-2023シーズンプログラム共同記者発表会が開催された。大阪を拠点に活動する大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団が一堂に会しシーズンプログラムを発表するという企画で、今年で4回目を迎える。

大阪交響楽団

左:常務理事・事務局長 赤穂正秀 右:次期常任指揮者 山下一史

 まずは2022年4月からスタートする3人の指揮者体制を紹介。常任指揮者に山下一史、ミュージックパートナーに柴田真郁、首席客演指揮者に髙橋直史が就任。オペラを得意とする点で三者共通している。山下は長きにわたりカラヤンのアシスタントを務め、柴田も髙橋もイタリア、ドイツの劇場で研鑽を積んでいる。山下は、2つの定期演奏会を担当。ひとつ目の就任記念演奏会では、「4つの最後の歌」「英雄の生涯」のR.シュトラスの作品を中心としたプログラム、2つ目のシーズン最後の演奏会では、シューマン、メンデルスゾーンを取り上げる。柴田は、ドヴォルザークの歌劇《ルサルカ》を演奏会形式で、髙橋は、「音楽と文学」をテーマに、シェーンベルク「6つの歌」、シューマンの交響曲第1番「春」などを選曲。常任指揮者就任を迎えて山下は、「尾高先生は高校の時からお世話になった恩師。このように先生と一緒にこの場に立ち、同じ街で指揮者としてご一緒できることを光栄に思う」と述べた。また、大阪交響楽団の魅力について「とにかく熱い!子どものころに音楽を好きになった気持ちを忘れないで持っている。練習したことを本番で全力で投げ返してくれる熱い気持ちを持っているオーケストラ」と期待を込めて語った。

大阪フィルハーモニー交響楽団

左:事務局長 福山修 右:音楽監督 尾高忠明

 大阪フィルのラインナップでは、音楽監督の尾高が指揮をする3つの定期演奏会以外は、すべて外国人指揮者が登場することが特徴。2年越しとなるシャルル・デュトワやユベール・スダーンらベテランに加え、近年日本でも活躍が目覚ましいカーチュン・ウォンなど若手の指揮者も顔を揃える。来日できなかった方に少しでも早く来て欲しいという理由からこのような顔ぶれになったという。挨拶で尾高は、次のようにコメントした。
「とても大変な時期が続いているがいいこともあった。以前は、オーケストラのメンバーが舞台に出ていっても拍手はなかったが、いまは必ず拍手があり、メンバーもそれに応えている。しかし、今も入国制限はあり海外のアーティストには厳しい状態。基本的に日本のオーケストラは日本人の指揮者が振るべきだと考えるが、それだけではいけない。海外の指揮者やオケからも得るものが数多くある。彼らが来てくださることを切に願っている」
 創立75年のアニヴァーサリーを迎える大阪フィルと同い年という尾高はその魅力について「今までの自分の演奏になかったものを表出させてくれる。嬉しさを100倍にして返してくれる。自分の違う面を見られる思いがして本当に感謝している」と語った。

関西フィルハーモニー管弦楽団

左:首席指揮者 藤岡幸夫 右:常務理事・楽団長 手塚裕之

 関西フィルは、オーギュスタン・デュメイが音楽監督、飯守泰次郎が桂冠名誉指揮者、そして藤岡が首席指揮者を務める。藤岡はこの3人の指揮者体制に関して次のようにコメントした。
「はっきりとした役割になっている。デュメイはモーツァルト、ブラームス、ベートーヴェンというオーソドックスなレパートリーを中心に、彼ならではの斬新な解釈で新鮮な演奏を披露してくれる。次シーズンは、3回の定期演奏会に出演するが、いずれもヴァイオリンで指揮はしない。でも彼が選んだ指揮者が登場するから期待してほしい。飯守先生は、ドイツものがお得意でいらっしゃるが、名曲を定期でしっかりやっていただくということでチャイコフスキーを。そして僕は、邦人作品を積極的に取り上げていくことを関西フィルとは徹底してきた。なかでも自身の親戚でもある貴志康一の交響曲『仏陀』は非常に楽しみ。今後、彼の他の曲も紹介していきたい」
 関西フィルの魅力については「デュメイが10年、飯守先生が20年以上の関わり、そして僕が22年とそれぞれの指揮者と長い時間を過ごしてきたからこそのパッション、一体感がある。そして何よりよく“歌う”オーケストラ」と語った。

日本センチュリー交響楽団

左:首席指揮者 飯森範親 右:副理事長・楽団長 望月正樹

 注目は、10月に行われたショパン・コンクールの参加者が3名いること。第2位に輝いた反田恭平は、飯森の指揮でブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏会のメインプログラムとして披露する。角野隼斗は、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」、牛田智大はショパンのピアノ協奏曲第1番を選曲。他にも務川慧悟、福間洸太朗、小林海都など人気・実力を兼ね備えた若手ピアニストが登場する。そして首席客演指揮者2シーズン目に入る久石譲は、自作管弦楽作品を世界初演したり、九州交響楽団と共演する公演など新しい試みも。また、日本センチュリーはシンフォニーホールの定期公演で、大阪駅発着の送迎バスを運行を企画したり、若者向けにすべての定期公演を5,000円で聴ける年間パスポートを販売、そして飯森がミュージックパートナーを務める東京ニューシティ管弦楽団とオーケストラアライアンスを結び、それぞれの定期公演でそのパスポートを使うことができるという珍しい取り組みを始めるという。飯森は、日本センチュリーの魅力、今後の抱負を次のように語った。
「とにかく美しい響き。お客さまファーストで、いらしていただいた方に充実した時間を提供していきたい」

 そして恒例となった春の4オケ祭、「4オケの4大シンフォニー」は、2022年4月16日にフェスティバルホールで開催される。関西フィルと藤岡によるシューマン「春」、大阪交響楽団と外山雄三でモーツァルト「ジュピター」、大阪フィルと尾高がチャイコフスキーの5番、日本センチュリー響と秋山和慶によるドヴォルザークの「新世界より」というラインナップ。それぞれの魅力を発揮できる名曲で、豪華な春の一日となるだろう。

 会見の中で尾高は以下のようにコメントした。
「さっき山下さんが僕の弟子だとおっしゃってくださいましたが、実は、飯森さんも教えたことがあります。藤岡さんはノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックという学校の指揮科の卒業生で、僕が審査しました。僕が『イエス』と言ったから今の彼があるんです」と会場の笑いを誘った。

 指揮者同士の繋がりもあり、関係者含め終始和やかなムード。普段はたがいにライバル関係にありつつも、共に大阪のオーケストラシーンを盛り上げていきたいという強い気持ちが伝わってくる会見であった。

大阪交響楽団
http://sym.jp
大阪フィルハーモニー交響楽団
https://www.osaka-phil.com
関西フィルハーモニー管弦楽団
https://kansaiphil.jp
日本センチュリー交響楽団
https://www.century-orchestra.jp