東京・春・音楽祭 2022 開催決定! 豪華ラインナップを発表

国内外のアーティストたちによる百花繚乱のプログラム

 2022年の東京・春・音楽祭の概要が発表された。3月18日から4月19日にかけて、オペラから室内楽まで大小さまざまな規模の注目公演がずらりと並ぶ。コロナ禍以来、大規模な音楽祭には厳しい状況が続いてきたが、2022年は復活の年となることを期待したい。

 恒例の「東京春祭ワーグナー・シリーズ」は、マレク・ヤノフスキの指揮で《ローエングリン》(演奏会形式)が上演される。ワーグナーの主要オペラを一巡した同シリーズは2周目に入り、18年以来にとりあげられる。ローエングリン役はフランクフルト歌劇場をはじめドイツ各地の劇場で活躍するヴィンセント・ヴォルフシュタイナー。ラジオ局のテクニカル・ディレクターなどを務めた後、30代半ばから声楽を学んでオペラ歌手としてのキャリアを築いたという遅咲きのテノールだ。エルザ役はノルウェー出身でウィーンやドレスデンなど欧州各地で活動の場を広げるマリータ ・ソルベルグ。オーケストラはNHK交響楽団、合唱は東京オペラシンガーズ。名匠ヤノフスキの厳格な指揮のもと、ワーグナーの神髄を体験させてくれることだろう。

東京春祭ワーグナー・シリーズ《さまよえるオランダ人》(2019年)より
(C)東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡
マレク・ヤノフスキ(C)Felix Broede
ピエール・ジョルジョ・モランディ

 もうひとつのオペラ企画、「東京春祭プッチーニ・シリーズ」では《トゥーランドット》(演奏会形式)が上演される。トゥーランドット役のリカルダ・メルベート、カラフ役のステファノ・ラ・コッラら実力者がそろう。リッカルド・ムーティのアシスタントも経験したピエール・ジョルジョ・モランディが読売日本交響楽団を指揮する。プッチーニの絢爛たるオーケストレーションを味わいたい。

 リッカルド・ムーティといえば、前回の《マクベス》(演奏会形式)での名演が忘れがたいが、今回はオーケストラ公演のみが予定されている。ムーティが東京春祭オーケストラでマジックを起こす場面はこれまでになんども目にしてきた。特別編成のオーケストラであっても、鳴り響くのはまちがいなくムーティのサウンド。いったいどんなプログラムが用意されるのか、期待が高まる。

リッカルド・ムーティ
(C)Todd Rosenberg by courtesy of riccardomutimusic.com
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ(2021年)より(C)青柳聡

 「東京春祭 合唱の芸術シリーズ」では、アレクサンダー・ソディ指揮東京都交響楽団、東京オペラシンガーズ、東京少年少女合唱隊によりマーラーの交響曲第3番が演奏される。コロナ禍の間、大規模な合唱作品や大編成のオーケストラ作品を聴く機会は非常に限られていた。マーラーの交響曲第3番のような大作を渇望していた方も多いことだろう。そして都響といえばマーラーを得意とするオーケストラ。これまでに数々の名演を繰り広げてきたが、イギリス出身でマンハイム国立劇場音楽監督を務めるソディとの相性はいかに。

 シリーズ企画「ベンジャミン・ブリテンの世界」では、20年に上演が予定されながら中止となってしまった歌劇《ノアの洪水》(演奏会形式)が復活を果たす。もともと教会で信者の子どもたちを中心に上演できるように考えられた作品とあって、コロナ禍での上演は困難だったが、今回ついに実現する。加藤昌則指揮BRTアンサンブル、NHK東京児童合唱団の出演、ノア役を宮本益光、ノアの妻を波多野睦美が歌う。

ブリン・ターフェル(C)Mitch Jenkins/DG
セルゲイ・ババヤン(C)Marco Borggreve

 来日アーティストに大勢の名前が並ぶ光景も久しぶりだ。名バスバリトンのブリン・ターフェルは、東京交響楽団との共演で「Opera Night」と題した公演に出演する。ターフェルは「東京春祭 歌曲シリーズ」にも登場するので、オペラと歌曲の両面で至芸を披露することになる。ピアニストではセルゲイ・ババヤン、デジュー・ラーンキ、アレクサンドル・メルニコフ、アンドレアス・シュタイアーらの名手がリサイタルを開く。メルニコフとシュタイアーがデュオを組むシューベルト・プログラムも聴きもの。毎回人気の「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」では、樫本大進らによるピアノ四重奏が組まれる。

 そのほか、多数のミュージアム・コンサートや「子どものためのワーグナー《ローエングリン》」など、音楽祭名物企画は健在だ。百花繚乱のプログラムを眺めつつ、春の到来を待ち望みたい。
文:飯尾洋一

ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽(2019年)より (C)青柳聡
ミュージアム・コンサート「松尾俊介(ギター)〜現代美術と音楽が出会うとき」(2021年)より (C)飯田耕治

2022.3/18(金)〜4/19(火)
東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、上野公園内博物館・美術館 他
https://www.tokyo-harusai.com
※プログラム、チケット発売日などの情報は上記ウェブサイトでご確認ください。