リチャード・リン(ヴァイオリン)

“黄金の音色”を受け継ぐ俊才

 昨年開催された第5回仙台国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で優勝を飾ったリチャード・リンが東京でのお披露目となる優勝記念演奏会を6月19日に開く。リンは、台湾出身の両親のもと米国アリゾナ州フェニックスで生まれ、台湾で育った。ちなみに台湾名は「林品任」である。
「父は音楽家ではなかったのですが、熱心なクラシック音楽ファンで、5000枚以上のCDを持っていました。子供の頃、父と二人で父のコレクションしたCDを聴いたものです。ヴァイオリンを始めたのは、4歳の誕生日に祖母が小さなヴァイオリンをプレゼントしてくれたからです。それで幼稚園のグループ・レッスンに参加しました。真剣に取り組むようになったのは、中学生になってからですね。中学3年生で、台湾の国内コンクールで優勝した時に、初めてプロになろうと思いました」
 16歳でアメリカに渡り、フィラデルフィアのカーティス音楽院でアーロン・ローザンドに学んだ。現在はニューヨークのジュリアード音楽院の修士課程でルイス・カプランに学んでいる。
「カーティスとジュリアードでは、ジュリアードの方がずっと生徒数が多いのですが、カプラン先生が積極的に演奏機会を作ってくださるので非常に実践的です。一方、カーティスのヴァイオリン科は30人しかいませんし、全員が寮に入っています。また、カーティスでは他の生徒の演奏を聴くチャンスが多く、お互いに切磋琢磨することができます。ですから、どちらかといえばカーティスのほうが競争的かもしれません」
 6月の優勝記念演奏会ではブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲を弾く。
「仙台国際音楽コンクールのファイナルで弾いたブラームスのヴァイオリン協奏曲を審査員の方々に高く評価していただけたので、私のブラームスのソナタの演奏も日本の皆様に気に入っていただけると思います。ブラームスは私の大好きな作曲家。こうしてブラームスの作品を続けて演奏するのは意味のあることだと思いますし、いろんな側面が発見できればと思います。ブラームスの作品はとても深く内面的に充実していて、今の自分にとってはチャレンジですが、ベストを尽くします」
 将来はどのようなヴァイオリニストになりたいのだろうか。
「私は良き伝統の最後の伝道師ともいえるローザンド先生にカーティスで5年間つき、とても影響を受けました。ですから、クライスラーやハイフェッツら古い流派の持つ“黄金の音色”を私も受け継いでいきたいと思います」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2014年4月号から)

第5回仙台国際音楽コンクール優勝記念演奏会 リチャード・リン(ヴァイオリン)
★6月19日(木)・浜離宮朝日ホール
※同コンクールピアノ部門優勝者、ソヌ・イェゴンの記念演奏会も6/20(金)に同会場にて開催。
問:朝日ホールチケットセンター 03-3267-9990 
http://www.simc.jp