“三昧流”露西亜(ロシア)音楽の愉しみ
1984年に結成されたアンサンブル「音楽三昧」は、古楽系の奏者が中心ながら、古典ものではなくむしろ近代音楽の名曲を、メンバーでチェロ/ガンバ奏者の田崎瑞博の編曲で独奏曲から大管弦楽曲まで取り上げ、東西を股にかけた音楽による世界めぐりを縦横無尽に行ってきた。2010年、中心的メンバーの田中潤一が逝去してから、活動は長らく休止に追い込まれていた。しかし今回、古楽から現代まで、幅広いレパートリーを持つ菊池香苗(フルート/リコーダー)の加入によってその大きな穴が埋まり、ようやく再開がかなった。今回のテーマは『露西亜』。5人の異才たちがグリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲、ムソルグスキー「モスクワ河の夜明け」、ハチャトゥリアン「仮面舞踏会」、ラフマニノフ「前奏曲」、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」と、名曲がこれでもかと詰まったおもちゃ箱のようなプログラムを聴かせてくれる。編成に縛られない“曲”本位の選曲。5人が駆け巡りながら織りなす大交響楽の小宇宙。音楽の快楽主義者たちの三昧を、とくとご堪能あれ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年6月号から)
★6月18日(水)・東京オペラシティ リサイタルホール
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース 03-6908-8977
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