円熟の手腕が放つシンフォニスト・シューマンの魅力
東京シティ・フィルの桂冠名誉指揮者、飯守泰次郎がシューマンの交響曲全曲演奏シリーズをスタートする。12月9日、まず第1弾として演奏されるのは、交響曲第1番「春」と第2番。続く第3番「ライン」と第4番は来年に予定されている。ブレーメンやマンハイムなど、長くドイツの歌劇場で活躍し、古典派からロマン派のレパートリーを中心に取り組んできた飯守は、日本におけるドイツ音楽の泰斗というべき存在。説得力のあるシューマンを披露してくれることだろう。
シューマンはブラームスと同じく、生涯に4曲の交響曲を残している。演奏頻度はブラームスのほうがずっと高いだろうが、近年、演奏会でもレコーディングでもシューマンの交響曲への注目度が上がってきていると感じる。かつてはよくシューマンの交響曲におけるオーケストレーションの拙さが指摘されたものだが、近年はこれをネガティブにとらえる風潮はほとんど見当たらない。シューマンの厚塗りのオーケストレーションから生まれる彩度の低い渋さを独自の魅力ととらえるか、あるいは演奏現場の実践的な工夫で見通しのよいサウンドを目指すのか。指揮者の作品観の違いがどう音に反映されるのかという点も聴きどころのひとつ。そして第1番「春」にも第2番にも共通するのが、シューマンならではの暗く豊かな情熱だ。長調作品であっても、決してシンプルなハッピーエンドでは済まされないのがシューマン。その玄妙さを巨匠の指揮で味わいたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年11月号より)
第347回 定期演奏会 シューマン交響曲全曲演奏シリーズ1
2021.12/9(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp