ヴェッセリーナ・カサロヴァ(メゾソプラノ)

「カルメン役をやり遂げるには、多くの経験が必要なのです」

(C)Marco Borggreve

(C)Marco Borggreve

 1991年にザルツブルク音楽祭とウィーン国立歌劇場でセンセーショナルなデビューを飾って以来、現代を代表するメゾソプラノの一人として、第一線で活躍を続けているヴェッセリーナ・カサロヴァ。バロックからモーツァルト、そしてベルカントのメゾとして名声を得たが、近年は《ドン・カルロ》のエボリ公女、《タンホイザー》のヴェーヌスなどより重い役柄に挑戦し、成功を収めている。なかでも《カルメン》のタイトルロールは、長く専属歌手をつとめたホームグラウンドであるチューリヒ歌劇場でヨナス・カウフマンと共演して絶賛されたのをはじめ、世界中で歌っている得意のレパートリーだ。陰影に富んだ声を生かし、場面に応じてパワフルな強音から官能的な語りまでを自在に操るカサロヴァのカルメンは、21世紀の個性的なカルメン像の一つだといえよう。
 そのカサロヴァの《カルメン》の舞台上演をようやく日本で体験できる。スロヴェニアを代表する歌劇場、マリボール国立歌劇場と来日するのだ。
「とてもワクワクしています! 日本には何度も行きましたが、世界でもっとも素晴らしく、理解力に富んだ日本の聴衆との再会が本当に楽しみです!」
 カルメンという役柄、そしてカルメンという女性を、カサロヴァはどうとらえているのだろう。
「カルメン役は、女性歌手にとってあらゆるオペラのレパートリーのなかでもっとも特別であると同時に、誤解されてきた役柄だと思います。カルメンは、ルールや慣習に従わず、自分の望むものを自分で決める女性です。男性がみなカルメンを求めるのは、彼女が美しいからというだけでなく、すべての男性を拒むからなのです。カルメンは自分で恋人を選ぶ。だからこそ求められるのです」
「カルメンは伝統的に、ネガティヴに解釈されてきました。ある時は野獣のように、ある時はホセを破滅させる“ファム・ファタル”のように。けれどこのオペラの本当の被害者は、ホセに棄てられるミカエラと、別れを受け入れられず、ホセに殺されてしまうカルメンなのです。犯罪者はホセであり、カルメンではありません。だから私は、カルメンにシンパシーを感じるのです」
 カルメンは歌手にとって、憧れであると同時に難役でもある。カサロヴァの視点では、カルメン役の難しさはどこにあるのだろう。
「声楽的には、さほど難しい役ではありません。大変なのは、舞台にほぼ出ずっぱりでいなければならないことです。この役をやりとげるには、肉体的にも精神的にも、多くの経験が必要なのです」
 新しいカルメン像を描くカサロヴァ、これは見逃せない舞台となりそうだ。
取材・文:加藤浩子
(ぶらあぼ2014年6月号から)

スロヴェニア マリボール国立歌劇場《カルメン》
★6月7日(土)〜7月2日(水) 全国各地で公演
問:コンサート・ドアーズ 03-3544-4577
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.concertdoors.com
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