3年間の集大成としてとりあげる「田園」と「運命」
札幌交響楽団首席指揮者マックス・ポンマーがこの3月でポストを退く。ライプツィヒ放送交響楽団の首席指揮者や、日本国内の様々なオーケストラに客演してきたポンマーは、札響の同ポスト就任以来、バロックから現代音楽まで幅広い作品を取り上げてきた。また、札響との演奏会の他、シューマンやメンデルスゾーン作品の録音でも高い評価を得ている。
「札響は非常にフレンドリーなオーケストラで、いつも熱意を持ってリハーサルに臨んでくれます。私が着任した3年前はまず、そのクリアなサウンドに魅了されたのですが、私はもっと団員に“自由”になって欲しいと感じたのです。団員一人ひとりがなぜこのように演奏するのかを理解した上で“自由”になって欲しかったのです。今はその自主性も確立され、オーケストラは非常にいい状態にあります」
ポンマーは1936年にライプツィヒで生まれた。彼の人生で切っても切れない関係にあるのが、バッハの音楽だ。
「私はライプツィヒで生まれ育ち、バッハの音楽とともに生きてきました。実家はあのトーマス教会の向いにあり、赤ん坊のころからバッハの音楽を聴いていたのです! 直系の家族に音楽家はいないのですが、祖母はウィーン出身で彼女のウィーンの家にはブルックナーをはじめとする様々な音楽家が集っていたのです。私は彼女の弾くピアノを聴いてから幼稚園に通っていました」
ライプツィヒの大学で博士号を修得した後、ヘルマン・アーベントロートやヘルベルト・フォン・カラヤンに師事する。
「カラヤンには2年ほどベルリンで師事しました。同期には小澤征爾さんがいました。小澤さんは当時から特別で、すでにスター性がありました。当時のカラヤンはまだ若く、意外にも親しみやすかったのです。そして彼に勧められ、旧東ドイツ・フランクフルト(オーダー)の歌劇場で5年間、主にオペレッタを指揮しました。この経験は今でも非常に役にたっています」
今でこそ幅広いレパートリーを持つポンマーだが、その修得法は実に堅実だ。
「バロック、古典派、ロマン派といったように時系列にそって勉強してきました。ロマン派を指揮し始めたのはライプツィヒ放送響で仕事をするようになってからでした。西洋音楽が時間と共にどのように発展したのかを理解するのは、非常に重要だと思います」
札響との3年間のいわば集大成として行う同団の東京公演でとりあげるのは、ベートーヴェンの名曲「田園」と「運命」。
「これまで札響とつくりあげてきたものを、これらの傑作を通じて東京の方々に聴いていただけることを非常にうれしく思っています。バッハ、モーツァルトからブルックナー、マーラー、R.シュトラウスまで札響の仲間達と続けてきた音楽の旅、その締め括りがベートーヴェンの象徴的な名曲2曲とはなんと素晴らしいことでしょう!」
取材・文:大塚正昭
(ぶらあぼ2018年2月号より)
札幌交響楽団 東京公演2018
2018.2/6(火)19:00 サントリーホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
札幌交響楽団011-520-1771
http://www.sso.or.jp/
他公演
2018.2/3(土)札幌コンサートホールKitara(完売)