ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2026-27シーズンは、現地時間8月21日に開幕する。例年、8月下旬の開幕ではあるが、今年は若干早めのスタートだ。本格的なバカンスシーズンが終わって、ベルリンの音楽シーンも徐々に通常運転にもどるタイミング。同楽団の公演をライブやアーカイブでオンライン視聴することができる配信サービス「デジタル・コンサートホール」(DCH)では、開幕に合わせて8月21日までの期間限定で恒例のシーズン早割キャンペーンを実施している。

4K映像とハイレゾの音声、イマーシブオーディオ対応という最高品質で、世界トップの楽団の演奏を見放題で楽しめる、オーケストラファンには堪らないサービスだ。コンテンツは、ベルリン・フィルの年間約40回におよぶ演奏会ライブ映像はもちろん、過去の900以上のコンサート映像や楽団員のインタビューやドキュメンタリーなども用意されている。ライブ中継と時間差再配信があるのは、日本のファンには嬉しいところ。さらに、今季からの注目点として、自主レーベル「ベルリン・フィル・レコーディングス」の音源も聴けるようになるという。8月21日までの期間限定で、12ヶ月チケットが通常より10%OFFの152.1ユーロ(28,000円)となっている。為替レートの影響が大きい昨今ではあるが、少しでもお得に聴けるチャンスだ。
首席指揮者8季目のキリル・ペトレンコは、自らが指揮するプログラムの中心に“Mensch”(人間)という主題を置いた。自然、環境、社会との関わりのなかにおける人間、そして物質的な世界を超えたものへと向かう思考――そうした人間存在をめぐる問いが古典派から21世紀にいたるレパートリーを結びつける。シーズン開幕演奏会は、エルガー「エニグマ変奏曲」とチャイコフスキーの交響曲第4番というカップリング。11月にはレスピーギの「ローマ三部作」に挑み、緻密なタクトで色彩豊かなオーケストラ・サウンドを堪能させてくれそうだ。さらに2027年1月には、信仰と疑念、希望、超越をテーマとしたベルリン・フィルのビエンナーレ「徴(しるし)と奇跡(Zeichen & Wunder)」が開催される。その開幕公演では、メシアン「忘れられた捧げもの」、ヒンデミット「画家マティス」に、ベルリンを拠点に活動する中堅世代の作曲家サラ・ネムツォフの新作初演が組み合わされた。そしてビエンナーレの掉尾を飾るのがベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」。スコアの冒頭に「心より出で――願わくは再び心に至らんことを」と記したベートーヴェン。その信仰と人間性への切実な希求が、ペトレンコとベルリン・フィルによって没後200年にどのように響くのか、今シーズン屈指の注目公演となる。
2年目を迎える《ニーベルングの指環》ツィクルスは、ザルツブルク復活祭音楽祭での舞台上演に続き、《ワルキューレ》をベルリンで演奏会形式により披露(4月)。リーゼ・ダーヴィセン(ブリュンヒルデ)、ジェームズ・マッコークル(ジークムント)、クリストファー・モルトマン(ヴォータン)ら豪華ソリスト陣が揃う。意外なところでは、教育プログラム創設25周年を記念した企画として《ヘンゼルとグレーテル》をペトレンコが振るのも最注目公演のひとつだ。
客演指揮者陣も魅力的な顔ぶれとなっている。シーズン序盤で注目したいのは、今季のコンポーザー・イン・レジデンスを務めるブレット・ディーンが自作を指揮する公演だろう。かつて14年間にわたりベルリン・フィルのヴィオラ奏者を務め、その後作曲家に転身したディーン。特殊奏法を駆使してオーケストラの表現領域を拡張する独自の作品が、古巣によってどのように響くのか。演奏する姿も含め、映像で観ることでさらに楽しめる公演かもしれない。その翌週に登場するのが、前首席指揮者サイモン・ラトル。今年が生誕150年のファリャによるバレエ音楽「三角帽子」全曲やヤナーチェク「タラス・ブーリバ」に、楽団とゆかりの深いキャシー・ミリケンによるイングリッシュホルンと管弦楽のための新作世界初演を組み合わせる。現代作品を核に20世紀の名作を鮮やかに配する、いかにもラトルらしいプログラムだ。

今シーズンは、20世紀〜現代作品の優れた解釈者として定評のあるマキシム・パスカル、サンフランシスコ響の次期音楽監督就任が決まり、著名楽団からのオファーが絶えないエリム・チャンらがデビューを飾る。注目公演を挙げればキリがないが、フランスの中堅世代を代表する歌手、サビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ)とマリアンヌ・クレバッサ(メゾソプラノ)が登場する9月のダニエル・ハーディング指揮による「復活」、11月のイヴァン・フィッシャーが振る交響曲第5番、27年4月のグスターボ・ドゥダメルによる第7番と、マーラーを堪能できる機会も続く。ズービン・メータとピンカス・ズーカーマンという巨匠同士の共演も実現。さらに、2026年末で指揮活動を終えることを表明しているマレク・ヤノフスキの最後のベルリン・フィル登壇は、ぜひ映像で見届けたいところだ。2027年2月には、マルタ・アルゲリッチがラハフ・シャニの指揮でプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番に登場。ピアノとオーケストラのスリリングなやり取りが楽しみだ。クラウス・マケラは5月、ベルリン・フィル・デビューとなるイム・ユンチャンとラフマニノフのピアノ協奏曲第4番で共演する。

ソリストも豪華なことは言うまでもないが、とりわけピアノが充実。前述のアルゲリッチやイム・ユンチャンの他にも、ユジャ・ワン、ダニール・トリフォノフ、内田光子、イェフィム・ブロンフマンといったおなじみの面々が次々に登場。ジルヴェスター・コンサートでは、日本でも知名度急上昇中のアレクサンダー・マロフェーエフがショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番でベルリン・フィル・デビューを果たすのも、見逃せない。また、2024年に楽団のソロ・ホルン奏者に就任した中国出身のスーパースター、ユン・ゼンがモーツァルトのホルン協奏曲第4番でソリストとして初登場するのも、シーズンのハイライトのひとつに数えられるだろう。シューマンのチェロ協奏曲を披露するヨーヨー・マの久々のベルリン・フィル登場も話題を呼びそう。
世界屈指の奏者たちが集うベルリン・フィルにあって、第1コンサートマスターの樫本大進はもちろん、町田琴和やMINAMI(以上第1ヴァイオリン)、清水直子や今年入団の近衞剛大(以上ヴィオラ)ら日本出身の奏者も活躍している。さらにカラヤン・アカデミーで学ぶ若い音楽家たちも舞台に乗る機会があるので、彼らの姿まで映像で確かめられるのも、デジタル・コンサートホールならではの楽しみのひとつだ。新シーズンのライブはもちろん、豊富なアーカイブも含めて、ベルリン・フィルの“現在”を高画質・高音質で体験してみてはいかがだろうか。
文:編集部
写真提供:Berlin Phil Media
【Information】
ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール
Berliner Philharmoniker | Digital Concert Hall
8月21日までの期間限定 12ヵ月チケットが152,10 €で購入可能(通常169 €) ※自動更新なし

