ヴァン・カイック弦楽四重奏団が2年ぶりの来日! 明晰な造形と温かな手ざわりで味わう室内楽の愉しみ

©Sylvain Gripoix

 ヴァン・カイック弦楽四重奏団が2年ぶりに来日する。2012年にフランスで結成、早くも3年後にはウィグモアホール国際弦楽四重奏コンクールで優勝、瞬く間に世界各地で演奏を重ね、録音も積極的にリリースしてきた。その名を掲げる第1ヴァイオリンのニコラ・ヴァン・カイックを中心に、洗練されたサウンドとアンサンブルを実現。技術的には抜群のうまさで、造形のフォルムは現代的だが、けっして先鋭的にはならず、どこか懐かしい手ざわりもある。心ゆくまで室内楽の愉しさを味わわせてくれる、現代を代表するクァルテットの一つである。

 優勝から10年を過ぎての日本公演はなかなか重厚な演目。ハイドンの作品76の5は、美しい緩徐楽章から「ラルゴ」とも呼ばれる、愛すべき旋律の多いハイドン後期の傑作。続いてショスタコーヴィチの第8番。「ファシズムと戦争の犠牲者に」捧げられながら、作曲者自身の署名である「DSCH」音形が張り巡らされる重要作で、演奏機会も多い。作曲者生誕120年の今年、彼らがどう臨むのか、注目となる。そしてベートーヴェン「ラズモフスキー第1番」。この作曲家の中期の大作で、このジャンルを大きく拡大した金字塔。充実の時期にある彼らの表現に期待は大きい。

 なお、今回の日本ツアーはヴィオラが臨時メンバーとなり、アドリアン・ボワソーが参加するとのこと。ボワソーは前エベーヌ弦楽四重奏団メンバーの名手でもあり、この段階から準備しての参加はむしろ注目のポイントにもなろう。

文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年8月号より)

ヴァン・カイック弦楽四重奏団
2026.10/9(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。