
群馬交響楽団に二度目の登場となる指揮者のデイヴィッド・レイランド。2024年の客演時は、ブリテンの「夜想曲」(マーク・パドモア独唱)やリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」を指揮、好評を得た。「印象深かったのは、奏者のみなさんがリハーサルでは細部の表現にこだわりつつ、コンサートでは一転、力強く物語を語られていたことでした」と振り返る。
レイランドはベルギー南部のフランス語圏の町の生まれだが、父方の家族は1930年代の終わりにドイツから移住、母親はベルギー北部(オランダ語圏)の出身で、彼自身も仏独蘭英の言語を操る。それでもフランス音楽はもっとも身近なものであり、今回の群響とのオール・フレンチ・プログラム(高崎、東京)をとても楽しみにしている。
「どの作品もパリとの関わりをもっていて、『パリの一夜』と名づけたいプログラムです。カミーユ・ペパンは今、もっとも注目を浴びているフランスの女性作曲家で、私が音楽監督を務めるフランス国立メス管弦楽団でも何作か指揮してきました。作風はとてもフランス的でドビュッシーやラヴェルを思わせますが、その一方でアメリカのミニマル・ミュージックの影響も受けています。今回演奏する『花火』は昨年のBBCプロムスのラスト・ナイトで初演された曲で、会場をぱっと明るくしてくれるような作品です」
プログラムの大きな特徴は、管楽器のための協奏曲が2曲も聴けること! 昨年の神戸国際フルートコンクールの若き覇者、ファビアン・ヨハネス・エッガーがイベールの「フルート協奏曲」を、群響の誇る名手、濵地宗がトマジの「ホルン協奏曲」を演奏する。
「私自身、サクソフォンを学んでいたので、これらの作品は私のDNAに深く根ざしているといえます。イベールの華麗な協奏曲はフルートのための最高峰の傑作ですが、実は彼はサクソフォン協奏曲も書いていて、フレーズや技術面で共通点があって興味深いです。一方、トマジの音楽は、フランス的でありながらも中東風の異国情緒を感じさせます。トマジはオーケストレーションもたいへんすぐれています」
サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」は、何度となく演奏してきた身近なレパートリー。それでも「毎回新しい発見があってたいへん奥深い作品」と語る。
「冒頭はとても神秘的に始まりますが、それはベルリオーズが『幻想交響曲』で用いた『怒りの日』のモチーフから構成されていて、そのモチーフを核に全曲を展開させていくサン=サーンスの手腕はとても見事です。曲はフランツ・リストへのオマージュでもあるんですよ」
現在はリエージュ王立音楽院で後進の指導にあたるが、自分が指揮者になる上でもっとも大きな影響を受けた音楽家はアーノンクールだと話す。
「彼がモーツァルテウム音楽大学で教えた最後の年に出会い、数年間師事しましたが、なかでも音楽におけるドラマトゥルギーの大切さを教わりました。当時、私は音楽大学の助手をしていたのですが、あるとき、彼が『思い切って指揮者としての道に進みなさい』と背中を押してくれたのです。それがなければ、今の自分はないかもしれません」
恩師仕込みのドラマ作りと、フレンチ・サウンドに対する繊細な感性を併せ持つマエストロが、群響とどのような演奏を作り上げるのか期待したい。
取材・文:後藤菜穂子
(ぶらあぼ2026年10月号より)
群馬交響楽団
第622回 定期演奏会 2026.10/24(土)16:00 高崎芸術劇場
東京定期演奏会 10/25(日)15:00 すみだトリフォニーホール
問 群響チケット専用電話027-322-4944
https://www.gunkyo.com

後藤菜穂子 Nahoko Gotoh
桐朋学園大学音楽学部卒業、東京藝術大学大学院修士課程修了。音楽学専攻。英国ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ博士課程を経て、現在ロンドンを拠点に音楽ライター、翻訳家、通訳として活動。『音楽の友』、『モーストリー・クラシック』など専門誌に執筆。訳書に『〈第九〉誕生』(春秋社)、『クラシック音楽家のためのセルフマネジメントハンドブック』(アルテスパブリッシング)他。
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