【徹底ガイド】コンクールの楽しみ方 〜2026年の主な音楽コンクール〜

文:飯田有抄

 2025年10月に開催されたショパン国際ピアノコンクールの熱狂は、今なお記憶に新しいところだが、2026年もまた世界各地で数々の音楽コンクールが開催される。今や国際コンクールの多くは、予選からファイナルまでネットでライブ配信を行っている。実際に会場に足を運べなくても、自宅にいながらにして鑑賞を楽しめる時代となった。もちろん、コンクール鑑賞をひとつの理由として現地を訪問したり、旅程に組み込んで、実際のステージ演奏で聴くのも有意義だ。通常のコンサート鑑賞とはまた一味違った緊張感のある会場での体験は、思い出深いものとなるだろう。そうした多様な楽しみ方ができる今、世界トップレベルの若手演奏家たちの競演をリアルタイムで楽しむために、2026年の注目コンクールをチェックしておこう。

◆2月開幕!第6回高松国際ピアノコンクール

JR高松駅前にあるサンポートホール高松が熱戦の舞台

 まず注目したいのが、2月10日から23日にかけて香川県高松市で開催される第6回高松国際ピアノコンクールだ。今回から審査員長に東京藝術大学教授の青柳晋が就任。第17回・18回ショパン国際ピアノコンクールの審査委員長を務めたカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロンをはじめ国際的に活躍するピアニストたち、作曲家の池辺晋一郎らが審査員に名を連ねる。

第5回大会本選より

 47名(1/27現在)の出場者には、数々の国際コンクールで優勝し、リーズ国際ピアノコンクールなどでも実績を重ねてきた丸山凪乃、ミュンヘン・ピアノ・コンクールで優勝した横山瑠佳、ボン・テレコム・ベートーヴェン国際コンクール第2位の竹澤勇人ら、実力派の日本勢が揃う。韓国、中国からの参加者も多く、16歳のチョン・スンホ(韓国)から35歳のダニーロ・サイエンコ(ウクライナ)まで幅広い年齢層が瀬戸内海を望むサンポートホール高松で競い合う。全審査がライブ配信される予定だ。(年齢は2/10現在)

◆4~5月、テルアビブでルービンシュタイン国際ピアノコンクール

Arthur Rubinstein International Piano Master Competition
ファイナルは室内楽と協奏曲の二本立て。写真は2023年第3位の黒木雪音 ©Yoel-Levy

 4月28日から5月15日まで、イスラエル・テルアビブで第18回アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールが開催される。20世紀の巨匠ルービンシュタインを記念し1974年に創設された同コンクールは、エマニュエル・アックス、ゲルハルト・オピッツ、ダニール・トリフォノフら錚々たる顔ぶれを輩出してきた。

2023年の覇者、ケヴィン・チェンのその後の活躍は周知の通り

 今回は審査員陣が豪華だ。マルタ・アルゲリッチ、ダニエル・バレンボイム、イェフィム・ブロンフマンという巨匠たちに加え、日本からは海老彰子、長年審査員長を務めるアリエ・ヴァルディと、まさにドリームチーム。出場者41名(1/27現在)には、2025年ショパン国際コンクール第5位のピォトル・アレクセヴィチ(ポーランド)や、同じく昨年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでファイナリストとなった実力者、フィリップ・リノフ(ロシア)、2023年ホロヴィッツ国際ピアノコンクール優勝のロマン・フェディウルコ(ウクライナ)など各国の精鋭が揃う(フェディウルコは高松にも出場)。日本からは2023年リヨン国際ピアノコンクールで史上最年少で優勝した八木大輔が出場する。中東情勢は気になるところだが、文化の力を信じて開催に向け準備が進んでいる。

◆10月、ポズナンでヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール

Hina Maeda
2022年のヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールを制した前田妃奈
©International Henryk Wieniawski Violin Competition

 ヴァイオリンのコンクールでは、10月8日から25日までポーランド・ポズナンで開催される第17回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールに注目したい。昨年11月には東京でも記者会見が行われるなど、日本からの期待が高まっているコンクールだ。

1935年、ヴィエニャフスキ生誕100年を記念して創設された同コンクールは、第1回で若き15歳のジネット・ヌヴーが、27歳のダヴィッド・オイストラフを抑えて優勝したという伝説的エピソードで知られる。2022年の前回大会では日本の前田妃奈が、漆原啓子以来41年ぶりとなる日本人優勝を果たし話題を呼んだ。今回は予備予選が世界各地で行われ、通過者が本大会に進む。ヴィエニャフスキの華麗な技巧作品が課題曲に含まれ、超絶技巧と詩情の両立が求められる。ファイナルではポズナン・フィルとの共演も聴きどころだ。

◆11月のロン=ティボー国際コンクール ヴァイオリン部門と第10回静岡国際オペラコンクール

2023年ロン=ティボー国際コンクール(ヴァイオリン部門)表彰式より
©Corentin Schimel – Fondation Long-Thibaud

 11月10日から14日には、パリでロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門が開催される。1943年にピアニストのマルグリット・ロンとヴァイオリニストのジャック・ティボーが創設した伝統あるコンクールで、日本からは樫本大進、南紫音らを輩出。2023年の前回大会では竹内鴻史郎が第3位、橘和美優が第5位に入賞している。財政難に見舞われながらも、フランス音楽の薫り高い審査基準で若手を見出し続ける名門だ。

 同じく11月、14日から22日にかけては第10回静岡国際オペラコンクールがアクトシティ浜松で開催される。静岡県ゆかりの国際的プリマドンナ・三浦環の没後50年を記念して1996年に始まった同コンクールは、日本では数少ない国際オペラコンクールとして存在感を示してきた。本選ではオーケストラ伴奏での演奏が行われ、若き歌手たちの華やかな競演が期待される。

◆そのほかの注目コンクール

 このほかにも、5月17日から24日には、この分野では世界屈指の存在に成長した大阪国際室内楽コンクールが弦楽四重奏とピアノ三重奏(またはピアノ四重奏)の2部門で開催される。同時開催されるユニークな室内楽フェスタでは、世界各地の民俗音楽や伝統音楽のアンサンブルが登場するので、そちらも見逃せない。8月23日から9月19日にはルーマニアでエネスク国際コンクールのチェロ、ヴァイオリン、ピアノ、作曲部門が、また8月末から9月18日にかけてはミュンヘンのARD国際音楽コンクールでファゴット、打楽器、弦楽四重奏、オルガンの4部門が行われるなど、2026年は室内楽や多彩な楽器のコンクールも充実している。

◆コンクールで「推し」の奏者と出会う

 コンクールは、未来のスターとの出会いの場でもある。コンクール鑑賞の醍醐味のひとつは、「推し」の参加者と出会い、その奏者の演奏を聴き続けることだ。今年出場する若手の中から、次世代を担うスター奏者が生まれるかもしれない。応援したい奏者がいると、審査の行方がぐっと気になってくる。同じ課題曲を複数の奏者がどう弾き分けるか、聴き比べる面白さも格別だ。配信を通じて、あるいは会場に足を運んで、その瞬間に立ち会ってみてはいかがだろうか。


飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)

音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。