GTというタイトルを見て〈クルマ〉を連想してしまうのは、私のような旧世代だけだろうか? 群馬交響楽団(G)+高崎芸術劇場(T)による全6公演のシンフォニック・コンサートのシリーズのことで、「シンフォニック」と言っても、多様な音楽の世界があることを教えてくれるユニークな企画である。

2026年の「vol.1」(4/18)は「うた、唄、詩、歌〜OUR SONGS〜」と題されたコンサート。指揮は松井慶太、歌は横山だいすけというフレッシュなコンビによる。オーケストラ用に編曲された歌の数々は、あの歴史的名曲〈上を向いて歩こう〉から〈翼をください〉まで、時代を超えて歌い継がれる歌ばかり。横山だいすけは「歌のお兄さん」としても親しまれてきたが、群響の2024年委嘱作品である山本菜摘〈UTAGE〜宴〜〉をはじめ、木下牧子の〈春に〉、村松崇継の〈いのちの歌〉など、これまでの活躍を超える“大人の世界”を歌うことになる。指揮の松井も2009年、東京国際音楽コンクール〈指揮〉で入賞した後、2011年から18年に東京混声合唱団コンダクター・イン・レジデンス、25年からオーケストラ・アンサンブル金沢パーマネント・コンダクターとしても活躍している実力派。そしてこのコンサートには群馬大学共同教育学部附属中学校音楽部(全日本合唱コンクール全国大会中学校混声の部にて金賞を受賞)も参加し、その若々しい声のハーモニーの魅力を加えてくれる。春の風が吹けば、つい自分の好きな歌を口ずさんでしまう。このコンサートで、新しい「うた、唄、詩」の世界を発見してほしい。

さて、その次からのコンサートもかなりボリュームがある。6月6日(vol.2)には指揮界を牽引する沼尻竜典を迎えて、プッチーニの傑作《トスカ》をセミ・ステージ形式で演奏するが、主役の歌姫トスカには佐藤康子、恋人カヴァラドッシにはシュテファン・ポップ、スカルピアには上江隼人がキャスティングされている。舞台構成を日本を代表する演出家・粟國淳が担当するのも注目したい。

右:アンサンブル・ウィーン=ベルリン ©Tomoko Hidaki
8月1日(vol.3)は映画音楽特集。米田覚士が指揮で登場するが、米田と言えば、2025年のブザンソン国際若手指揮者コンクールで優勝したいま一番の注目株。そのニュースが流れた時に、岡山出身で、高校の後輩にあの藤井風がいるという話題に、個人的になぜか嫉妬心を覚えてしまった。そんなすごい高校(岡山城東高校)あるのだね!と。米田の指揮によって、様々にスクリーンを彩ってきた音楽が、どんな風に広がるのか、期待のコンサートである。

9月19日(vol.4)には、世界トップ・オケの両雄、ベルリン・フィルとウィーン・フィルの名手による「アンサンブル・ウィーン=ベルリン」を迎えて、モーツァルトの協奏曲の饗宴が開かれる。これも聴きのがせない。さらに星がまたたいているだろう空気の綺麗な12月19日(vol.5)には大活躍を見せる指揮者・下野竜也のレクチャー付きホルストの「惑星」、そして2027年2月7日(vol.6)にはジャズ界とクラシック界の両方で活躍するピアニスト・小曽根真を迎えて、巨匠・尾高忠明がタクトをとる「GTピアノ・コンチェルト スペシャル」が開催される。
シンフォニックと言っても、本当に身近な歌からオペラ、そして映画音楽に本格的なクラシックの傑作まで、たくさんの世界を見せてくれるこの「GTシンフォニック・コンサート」(全6回)はお得な通し券も発売中。ぜひ高崎芸術劇場の素晴らしいアコースティックも毎回味わっていただきたいシリーズだ。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2026年3月号より)
群馬交響楽団 × 高崎芸術劇場 GTシンフォニック・コンサート 2026-2027
【vol.1】 2026.4/18(土)14:00
【vol.2】 6/6(土)16:00
【vol.3】 8/1(土)14:00
【vol.4】 9/19(土)14:00
【vol.5】 12/19(土)14:00
【vol.6】 2027.2/7(日)14:00
高崎芸術劇場
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/
問:群馬交響楽団事務局027-322-4944
https://www.gunkyo.com

片桐卓也 Takuya Katagiri
1956年8月、福島県生まれ。早稲田大学在学中からフリーランスとして仕事を始め、映画、旅、自動車などの雑誌に関わる。1990年ごろから本格的にクラシック音楽関係の取材を始め、音楽雑誌に寄稿している。他に、コンサートの曲目解説、録音のライナーノーツの執筆なども多数。余裕があれば、バロック期のオペラを聴きにヨーロッパへ出かけている。趣味は都会の廃墟探訪。


