ポーランド生まれの実力派シモン・ネーリングがオール・ショパンで魅せる

©Bartek Barczyk

 今回もアジア系の活躍が目立ったショパン国際ピアノコンクール。2015年にチョ・ソンジンが優勝したコンクールで、地元ポーランドから唯一ファイナリストに残ったピアニストがシモン・ネーリングだった。

 1995年クラクフ生まれの新鋭は、その2年後にアルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールで優勝。同時に、ショパン作品最優秀演奏賞なども獲得している。

 浜離宮朝日ホールでのリサイタルは、オール・ショパン・プログラム。前半は、マズルカ op.17という落ち着いた雰囲気で開始。ボレロ op.19、即興曲第3番といった変化に富んだ選曲のあと、スケルツォ第2番で前半の最後をきりっと引き締める。持ち前の完成された技巧も冴えわたるはず。

 後半のプログラムは、夜想曲第4番、バラード第2番という、ドラマティックな曲が続く。そして、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」では、内側からふっと燃え上がる情熱にも期待したいところだ。

 すでに、ポーランド国立ショパン研究所(NIFC)のレーベルから、コンクールのライブ録音を含め、ショパンのディスクを4枚リリース。最新盤『夜想曲集と幻想ポロネーズ』を聴くと、高音のトリルの軽やかな音色など、粒ぞろいの良さを極めた響きに驚かされる。そして、ショパンという音楽に没入しつつも、自らの演奏を俯瞰して見ることのできる視座の広さ。今回のリサイタルは、若きピアニストの成熟した姿を確認できる一夜になるかもしれない。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2025年12月号より)

シモン・ネーリング ピアノ・リサイタル
2026.1/23(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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