トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンが来春、全国7都市を巡る。阪田知樹、広上淳一&名古屋フィルが共演!

3つのプログラムでウィーンの調べに酔いしれる

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン国立歌劇場のメンバーを中心とした特別編成の室内オーケストラ、トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンがこの春も日本ツアーを行う。2026年3月30日から4月9日にかけて、東京、名古屋、刈谷、西宮、仙台、札幌、福岡を巡る7都市8公演を開催する。

2025年公演より

 芸術監督はウィーン・フィルのコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデ。彼のもと、30名規模の室内オーケストラがこの公演のために組まれる。指揮者を置かず、同じウィーンの音楽観で結びついたメンバーたちが阿吽の呼吸でアンサンブルをくりひろげる。ウィーンの香りをたっぷりと堪能させてくれることだろう。

 プログラムはA、B、Cの3種類。Aプロ「名手が織り成す対話と調和のベートーヴェン」ではピアノに阪田知樹を迎え、シュトイデのヴァイオリン、ウィーン・フィルのソロ・チェロ奏者であるペーテル・ソモダリの独奏で、ベートーヴェンの「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲」が演奏される。室内楽と協奏曲の両方を一度に楽しめるような貴重な作品だ。メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」と交響曲第4番「イタリア」も魅力的な選曲。トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンの豊潤なサウンドが、陽光あふれるイタリアの風景をほうふつとさせる。

左より:阪田知樹、フォルクハルト・シュトイデ、ペーテル・ソモダリ

 Bプロ「ロマン派の息吹、世紀末の響きにいだかれてでは、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」と「イタリア」に、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」とシェーンベルクの「浄められた夜」(弦楽オーケストラ版)が組み合わされる。「ジークフリート牧歌」は、ワーグナーが妻コージマの出産をねぎらって誕生日の贈り物として書いたやさしさにあふれた名曲。一方、後期ロマン派の書法で書かれたシェーンベルクの「浄められた夜」は、女が恋人に向かって他の男との間の子を宿したと告白するデーメルの詩が題材になっている。両曲は生命の誕生を異なる角度から描いた愛の音楽なのだ。

 Cプロ「烈しくも美しい調べが舞う 鬼才ベルリオーズの幻想」と題して、「ジークフリート牧歌」に加えて、名古屋フィルハーモニー交響楽団との共演により、ベルリオーズの幻想交響曲が演奏される。この曲のみ、広上淳一が指揮を担う。こちらもまた特殊な愛の形を描いた音楽だ。恋に破れた芸術家の奇怪な幻想が、色彩的なオーケストレーションによって表現される。トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンと名古屋フィルのカラーが溶け合って、どんな音楽が生まれるのか。きっと鮮烈な体験が待っている。

文:飯尾洋一

左:広上淳一 右:名古屋フィルハーモニー交響楽団

Information

トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
プログラムA 東京:3/30(月)19:00 サントリーホール 大ホール
プログラムC 名古屋:4/3(金)19:00 愛知県芸術劇場コンサートホール
プログラムA 刈谷:4/4(土)15:00 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
プログラムB 西宮:4/5(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
プログラムB 仙台:4/6(月)19:00 東京エレクトロンホール宮城 大ホール
プログラムA 札幌:4/7(火)19:00 札幌コンサートホール Kitara 大ホール
プログラムA 福岡:4/8(水)19:00 アクロス福岡シンフォニーホール
プログラムB 東京:4/9(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

2025.12/13(土)発売

問合せ

《東京》 トヨタ・マスター・プレイヤーズ事務局 03-5210-7555
《札幌》 道新プレイガイド 0570-00-3871
《仙台》 河北新報社 事業部 022-211-1332
《名古屋・刈谷》 中日新聞コンサートデスク 052-678-5323
《西宮》神戸新聞事業社 080-8336-2467
《福岡》 西日本新聞イベントサービス 092-711-5491


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/