九州交響楽団の2026年度シーズンプログラム記者発表に太田弦、篠崎史紀が出席

左:篠崎史紀 右:太田弦

写真提供:九州交響楽団

 九州交響楽団が10月17日、福岡市内で2026年度シーズン(2026年4月~2027年3月)の主催公演ラインナップを発表した。会見には首席指揮者の太田弦、ミュージック・アドバイザーの篠崎史紀らが出席。アクロス福岡シンフォニーホールでの定期演奏会(全9回)を軸に、中規模ホールで小編成作品を中心に取り上げる「天神でクラシック」(全3回)、平日昼の新シリーズ「九響アフタヌーンセッション」(全2回)など、全29公演を展開する。

 首席指揮者として3季目を迎える太田弦は、シーズン開幕の4月定期で英国音楽を特集。ブリテンのヴァイオリン協奏曲(独奏:岡本誠司)と、同楽団にとって27年ぶりとなるウォルトンの交響曲第1番を組み合わせる(4/18)。さらに2026年が没後30年の武満徹「『系図』若い人たちのための音楽詩」(9/3)、没後20年の伊福部昭「ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲」(独奏:阪田知樹、27.1/28)など、同楽団にとって初演奏となる作品を含む挑戦的なプログラムを指揮する。

 会見で太田は、ブリテンの協奏曲について「演奏される機会の少ない曲ですが、天才の筆致が光る傑作。岡本さんと難曲を共演できるのが楽しみ」と語り、ウォルトンについては「2管編成で驚くほど壮大な音が鳴る。各パートの難易度も高いが、全力で挑みたい」と意気込んだ。
 27年1月の公演では「土」をテーマに、福岡県のアーティスト・イン・レジデンス事業で生まれた宮下亮明「土に還る/土をこねる~Sol-E-D-A音列のパラフレーズ~」に加え、コダーイ「ハンガリー民謡〈くじゃく〉の主題による変奏曲」、伊福部昭の「協奏風交響曲」を指揮。
 「伊福部さんは僕の高校(北海道札幌西高)の大先輩で、ソリストの阪田さんは伊福部さんの孫弟子。二人で演奏できることをすごく嬉しく思います」と笑顔を見せた。

 篠崎史紀は5月の「天神でクラシック」に登場(5/30)。指揮者を置かず九響をリードする。プログラムは、J.S.バッハ「ブランデンブルク協奏曲第3番」のほか、「2つのヴァイオリンのための協奏曲」では九響第2ヴァイオリン首席奏者の山下大樹と共演し、メインにヴィヴァルディ「四季」を据える。近年の九響では珍しいバロック特集だ。
 「バロック音楽は“再生と伝承”の象徴。古楽器ではなく現代の楽器で演奏することに意味があります。300年経っても答えの出ない音楽を、今の私たちがどう再生するか。その挑戦を聴いてほしい。
 バッハの協奏曲では若い九響メンバーと共演します。世代を超えた音楽の対話、人間の隔たりを超える力を感じていただきたい」と熱を込めた。

 新シーズンの定期演奏会には多彩な指揮者が登場。
 同楽団の音楽監督を10年にわたり務め、現在は終身名誉音楽監督の任にある小泉和裕はシューベルトの交響曲第5番とリスト「ダンテの神曲による交響曲」をカップリング(10/7)。長年にわたり九響を支えてきた小泉が、現在の楽団の成熟を示す。
 近年共演を重ねるキンボー・イシイはR.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、「ドン・キホーテ」などを指揮し、ウィーン・フィル首席のタマーシュ・ヴァルガ(チェロ)と、日本とドイツを拠点に活動する杉田恵理(ヴィオラ)をソリストに迎える(5/13)。ユベール・スダーンはドビュッシー「海」を軸に、今年のショパンコンクールで注目を集めた中川優芽花をソリストに迎え、リストのピアノ協奏曲第2番でタクトをとる(6/12)。

 さらに、ドルトムント市立歌劇場の第一指揮者と音楽総監督代理を兼ねる、本場たたき上げの実力派・小林資典(7/24)、パーヴォ・ヤルヴィのアシスタントも務めるブラジル出身のシモーネ・メネセス(11/28)、マイニンゲン州立劇場の総音楽監督キリアン・ファレル(27.3/6)の3人が九響初登場。それぞれの個性が光るプログラムで、オーケストラに新風を吹き込む。

 新シリーズ「九響アフタヌーンセッション」は、平日昼に名曲を気軽に楽しむ全2回構成。第1回は熊倉優指揮、郷古廉(N響第1コンサートマスター)によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(8/5)。第2回は現田茂夫と、YouTuberとしても注目を集めるピアニスト石井琢磨がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を共演する(27.3/18)。親しみやすくも本格的な“午後の名演”が期待される。
 北九州定期(第80回)では太田がハイドン交響曲第88番「V字」とショスタコーヴィチの交響曲第9番を指揮(6/27)。年末の「第九」公演では、武満徹「うた」の新編曲版を世界初演する(12/18:福岡,12/20:北九州)。

 現在31歳、若きリーダー太田弦が率いる九州交響楽団。2026-27シーズンは、全国のクラシックファンにとっても見逃せない一年となるだろう。

文:編集部

九州交響楽団
http://kyukyo.or.jp