久元祐子のベートーヴェン・ツィクルス第3弾。初期ソナタ第2番は、下行音の主題で始まるが、音階上行のパッセージがとても印象的だ。久元はきれいなタッチで、自然に伝えてくれる。それは終楽章のロンド主題の上行走句まで繋がる。第7番は、主題に力感がこもり、弱音からあっという間にffまで駆け上がる。緩徐楽章のバスの動きや切れ切れの楽句に悲哀が滲み出る。第11番冒頭主題では、第1主題の機動性と第2主題の天に昇るような音色変化にハッとさせられる。メヌエットの愛らしい優雅さも聴きものだ。第12番は葬送行進曲に焦点があるが、変奏の第1楽章も、ロンド終曲も味わい深い。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年11月号より)
【information】
配信『久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.3』
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第2番、同第7番、同第11番、同第12番「葬送」/シューベルト(R.シュトラウス編):クッペルヴィーザー・ワルツ/J.シュトラウスⅡ世:ワルツ「酒、女、歌」より第4ワルツ
久元祐子(ピアノ)
収録:2025年5月、東京文化会館(小)(ライブ)
コジマ録音
ALM-9285,9286


