Il Pomo d’Oro−「黄金の林檎」。アントニオ・チェスティの名作バロック・オペラからその名を取ったイタリアの古楽オーケストラ、待望の初来日である。イタリアの古楽団体と言えば濃厚な歌と表現の激しさが特徴だが、イル・ポモドーロはそれに加えて柔軟な対応力が際立つ。バロック音楽はもちろん、首席指揮者マクシム・エメリャニチェフ指揮のモーツァルトの交響曲集など、古典派以降でも鮮烈な演奏を繰り広げる。
本公演は首席客演指揮者でもあり、同楽団とJ.S.バッハのチェンバロ協奏曲集の録音が高く評価されたフランチェスコ・コルティが中心となったプログラム。濃密な合奏とコルティの熱気と読みの深さが両立した独奏が印象深かった同ディスクの演奏が、ライブでさらに羽ばたくことが期待される。デモーニッシュなニ短調協奏曲は録音ではフル・オーケストラ編成だったが、今回は極小編成(第一ヴァイオリンのエフゲニー・スヴィリドフもタルティーニやベンダのディスクを出している凄腕)で、より緊密なアンサンブルが楽しめよう。そして日本を代表するフラウト・トラヴェルソ奏者、前田りり子が加わっての「ブランデンブルク協奏曲第5番」が聴けるという豪華さ。その前田が独奏のC.P.E.バッハのフルート協奏曲、さらになかなか聴く機会に恵まれない隠れた傑作、J.A.ベンダのチェンバロ協奏曲と「ポスト・バッハ」時代も射程に入れた聴きごたえあるプログラムだ。「黄金の林檎」を生で味わおう。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2024年12月号より)
イル・ポモドーロ with フランチェスコ・コルティ
2025.1/21(火)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp