すでに2026年3月をもって東京交響楽団音楽監督の任期を満了することが発表されているジョナサン・ノット。在京オーケストラのなかでも屈指の名コンビとして、2014年シーズンからノット&東響は絶えず進化を続け、音楽界に豊かな実りをもたらしてきた。これからは一回一回の共演が宝物のような体験になる。
12月の定期演奏会で組まれたプログラムは、シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲(独奏はアヴァ・バハリ)とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。モダンとクラシックの組合せは、これまでにもたびたび披露されてきた、ノットの得意技だ。時代の離れた作品が鮮やかなコントラストを描くと同時に、モダンな作品の古典性、クラシックな作品の斬新さが伝わってくるところにノットのプログラミングの妙味がある。
シェーンベルクは今年生誕150年。記念の年とあって、注目度は増しているものの、後期ロマン派スタイルの初期作品に比べると、以降の作品はもうひとつ演奏機会が少ないな…と思っていたところに、12音技法を駆使したヴァイオリン協奏曲だ。日本デビューを果たすスウェーデンの新鋭、アヴァ・バハリが、雄弁なソロで作曲家の革新性を感じさせてくれることだろう。
交響曲第5番「運命」は、2015年にベートーヴェン交響曲シリーズの第1弾として演奏されて話題を呼んだ。それから9年を経てのふたたびの「運命」。成熟度を高めたノットと東響はいかなる「運命」に到達したのか。ひりひりするような熱い演奏を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年12月号より)
東京交響楽団
第727回 定期演奏会
2024.12/7(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第98回
2024.12/8(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp