アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

「ホルンの王」を迎えて贈る雄大なオーケストラサウンド

 相性の良さは必ずしも理屈ではない。話が合う、一緒にいると楽しいというのは直感的なものだ。これは音楽にも当てはまる。指揮者とオーケストラの間柄にもそんな部分が大いにあり、誰がどのオケを振るかでよく見知った名曲も全く違った相貌を帯びる。

 相性の良さという点で、アラン・ギルバートと都響はまさに理想のコンビだろう。ギルバートのタクトに、オケがワクワクしながら応える。音楽が弾み、上気したような気分がやがて力強い熱狂にまで高まる。聴き終わった後は、すかっと爽やかな後味が残る。

 このエネルギッシュなコンビにふさわしい季節は、夏だ。今年も生命の躍動を感じさせる魅力的なプログラムで、7月定期と都響スペシャルに登場する。

 ウェーベルン「夏風の中で」は「大管弦楽のための牧歌」というサブタイトルを持つ。ウェーベルンというとトータル・セリーの祖というイメージが強いが、この作品はまだ前衛に移行する前の、濃厚なロマンティシズムを湛えた作品で、鮮やかなオーケストレーションも楽しい。

 続いてベルリン・フィル首席奏者シュテファン・ドールを独奏に迎え、モーツァルトのホルン協奏曲第4番。すっきりとしたドールの音色が一陣の風のようにホールを駆け抜けることだろう。

 ドールはそのままオケに参加し、後半はR.シュトラウス「アルプス交響曲」。雄大な日の出で始まり、絶景の山頂へ。下山の途中、激しい嵐に遭遇、それが去ると日没後の静寂があたりを包み込む。ギルバート&都響のサウンドに乗って、このバーチャル登山を体験しよう!
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年7月号より)

第979回 定期演奏会Aシリーズ 2023.7/19(水) 
都響スペシャル 7/20(木)
各日19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp