チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

成熟の名コンビで聴くウィーン交響曲の真髄

チョン・ミョンフン(c)上野隆文

 東京フィルと名誉音楽監督チョン・ミョンフンの関係は、やはり“スペシャル”だ。2022年の2つの公演、5月のフランスもの─なかでもドビュッシー「海」─、10月のヴェルディ《ファルスタッフ》は、共に緻密さと生気と味わいに充ちた、彼らにしか表出し得ない名演だった。

 それゆえ2023シーズンのオープニングにマエストロ・チョンが登場するのは嬉しい限りだ。演目は、シューベルトの交響曲第7番「未完成」とブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)が並んだ“王道の7番プロ”。いずれも各作曲家の交響曲中、最もメロディアスな名作だけに、年の初めから流麗で美しい管弦楽演奏を堪能できるし、ウィーンで活躍したロマン派初期と後期の作曲家の代表作を対照する、あるいは類似点もある2人の共通性を体感する楽しみも味わえる。

 チョン・ミョンフンは、東京フィルでベートーヴェン、ブラームス、マーラーといった独墺の作曲家を度々取り上げ、数多の快演を展開してきた。“凄み漂う円熟の味”で魅せた21年のブラームス交響曲全曲演奏の記憶も新しい。シューベルトはコンビ初期の稀有の名演、ブルックナーでは交響曲第8番の重量感のある表現が忘れがたく、特に後者の、低弦を厚くした編成によるダイナミックで壮大なパフォーマンスは、他では聴けぬものだった。今回の2曲は、マエストロが得意とする“歌”に溢れた交響曲である点が、まず期待値を上げる。そして、熟成の度合いを増し、コロナ禍で絆をさらに深めた今の当コンビが、いかなる音楽を生み出し、いかなる感動を与えてくれるのか? 実演に足を運ばずにはおれない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年1月号より)

第151回 東京オペラシティ定期シリーズ 
2023.1/26(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第978回 サントリー定期シリーズ  
1/27(金)19:00 サントリーホール
第979回 オーチャード定期演奏会 
1/29(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
2022.12/23(金)発売
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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