
侍BRASSがついに20周年を迎える。この種のグループとしては異例の長命を誇る彼らは、マルチなトロンボーン奏者 中川英二郎(楽団長)、スーパー・トランペット奏者 エリック・ミヤシロらジャズ&スタジオ系の達人と、トランペットのオッタビアーノ・クリストーフォリ(日本フィル)、ホルンの森博文(元・東京フィル)、バス・トロンボーンの野々下興一(都響)、テューバの次田心平(読響)らクラシック系の名手が融合したボーダーレスなスーパー・グループ。トランペット4、ホルン、トロンボーン2、ユーフォニアム、テューバ、パーカッションによる他に類のない10人編成のブラス・アンサンブルである。2006年に東京オペラシティ コンサートホールでデビュー公演を開催し、CDも同時リリース。以後、毎夏恒例の同ホール公演はほとんどが満席の聴衆を集め、もはや夏の風物詩となっている。ちなみに終演後のサイン会の長蛇の列も名物的な光景だ。
最大の特徴は、まずジャンルを超えた─特にスタジオ系のトップ奏者2人の参加は大きい─豪華メンバーによる華麗なサウンドと最高度のアンサンブル、そして金管アンサンブルでは除外されがちだったユーフォニアム(フリーの名奏者・齋藤充)の採用だ。特に同楽器が不可欠な吹奏楽の現場に即したユーフォニアムの参入は、サウンドやアレンジ(もちろん吹奏楽畑の支持も)に柔軟かつ清新な効果をもたらし、さらにはパーカッション(フリーの岩瀬立飛)も加わって音楽に幅を与えている。また、オリジナルの作品や編曲に徹したプログラムも特筆もの。この点も、和風テイストの曲名、楽譜やCDとの連動と相まって、独自の個性を形成している。
コンサートに何度も接して強く感じるのは、とにかく“滅法巧くて愉しい”こと。緊密で引き締まった金管八重奏から10人によるゴージャスで多彩なサウンドまで、通常の金管アンサンブルとはひと味違ったテイストを、最高級の響きと表現で満喫させてくれる。ステージや演目のエンターテインメント性も抜群に高く、エリックの超ハイトーンなどの凄技も唯一無二の聴きもの。それゆえ聴衆には、ブラスのコンサートでは珍しく、一般ファンの姿も多い。
節目となる今夏の東京オペラシティ公演は、「響宴二十年祭」と題して、「この20年間のレパートリーの中から選りすぐりの楽曲をお届けする」(中川)コンサート。彼らの始まりとも言える中川作曲の「葉隠」や、侍BRASSの代名詞であり、アンサンブル・コンテストでも人気の高い高橋宏樹の「文明開化の鐘」といった大定番曲、CD収録以来演奏される機会が少なかった曲など、まさに「侍BRASSの20年史」といった演目が披露される。とはいえ「定番曲も新アレンジを施す予定だし、新曲もある」(中川)とのことなので、新鮮な感触を得られるのも確か。加えて、メンバーが毎年交替しながらソロで演奏している中川の「侍《SAMURAI》」も、今回は久々に作曲者本人が吹くというから極めて興味深く、あらゆる意味で足を運ぶ価値が高い。これは、長年のファンも未知の方も心置きなく楽しめるコンサートになること必至だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年8月号より)
侍BRASS 2026 響宴二十年祭
2026.8/30(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。

