耳でも、目でも、舌でも楽しめる、新感覚エンターテインメント!
ジャンルを横断したコラボレーションが刺激的な、Hakuju Hallの『アート×アート×アート』。第4回はクラシック音楽とヒップホップ・ダンス、そしてスイーツが舞台上でダイレクトに交わり合う、正真正銘の異種格闘技型(?)エンターテインメント。登場するのは、鍵盤奏者・指揮者・作曲家の鈴木優人、マドンナも才能を認めるダンサーのTAKAHIRO、そしていま最も注目を集めるパティシエの菊地賢一。
30代の3人が出会ったのは1年前のことだ。
鈴木(以下、S)「菊地さんとは、NHKテレビのN響の番組で、パーヴォ・ヤルヴィさんが日本の若手クリエーターと議論を交わすという企画に呼ばれたのが出会いでした。収録前に楽屋でいただいたエクレアにすっかり虜になり、彼のお店に通うようになったのです」
TAKAHIRO(以下、T)「私の恩師が鈴木さんの大ファンでして、2015年に鈴木さんが演出されたバッハ・コレギウム・ジャパンのクリスマス・コンサートに連れて行ってもらった際に、お話させていただいたのが初めてです。その時に、お互いにビビっとくるものがあったのかと、勝手に思っておりますけれども(笑)」
菊地(以下、K)「アーティストは感性が鋭いので刺激になりますね。僕たちの世界だと、それを追い求めるのはコンクールに挑戦したりしている若い頃で、弟子やスタッフが入ってきて自分が教える側になると、少し感覚が変わっていくんですね。でもその研ぎ澄まされる感覚はやっぱり面白い」
まず気になるのが、この公演でパティシエの菊地が他の二人とどう関わるのかだ。
S「舞台上で実際に調理をしてもらって、そのお菓子をみなさんに召し上がっていただきます。タネ明かしをしすぎると面白くないので、詳細は当日のお楽しみということで(笑)。でも、そこを考えるのがすごく楽しい。パティシエとダンサーと音楽家がどう共演すべきかなんて何も決まりがないわけですから。本当にワクワクします」
ちなみにチケットはスイーツ代込みだ。
K「お菓子、何がいいでしょうね」
S「たとえばマカロン・タワーはどうでしょうか。みんなきっと写真を撮りたくなりますよ。でも、チェンバロの形のマカロン・タワーなんて無理ですよね?」
K「すごいですね! チェンバロの形はどちらかというとチョコレートのほうがイメージしやすいかもしれません」
と、本気なのか冗談なのか、取材中にもいろいろなアイディアが湧いてくる。
一方、チェンバロとヒップホップの相性はどうなのだろうか。まして中学生時代、携帯の着メロがメシアン(!)だったという優人少年。育ってきた環境は違うはずだ。
T「僕は昭和の歌謡曲が好きでよく聴いてました。鈴木さんは同い年だから、広瀬香美さんの『ロマンスの神様』が流行ったり、SPEEDが流行ったりしていた頃ですよ」
S「あ、SPEED! 懐かしいですけど、曲は全然知らないな。J-POPは最近のほうがまだ詳しいんですよ。それこそTAKAHIROさんが振り付けされた欅坂46のプロモーション・ビデオをYouTubeで見ました!」
T「おーっ! 本当ですか」
S「父がバッハをやっているもんだから、小学生の頃はクラシックの中でもほとんどバッハしか知りませんでした。古いものから、順番に聴いていきたいタイプなので、ベートーヴェンすらあまり知らなかったんです」
K「僕はブルーハーツとかBOØWYとかX-JAPANとかの世代です」
T「一番ロックな感じですね。ロック(菊地)→J-POP(TAKAHIRO)→クラシック(鈴木)と、だんだんマイルドなほうにグラデーションになってきましたね」
S「あれ? そのグラデーションはちょっと違うかもしれません。バロックのチェンバロ曲は、かなりとんがっているんですよ。実際チェンバロの音の波形を見ると、ピークがとんがってますし。同じチェンバロでも、今回弾く武満徹の曲はバロックよりマイルドですね。ちなみに今回は、マドンナの『ハング・アップ』まで弾いちゃいます(笑)」
T「日本に帰ってくると、他のジャンルの方と一緒に作るチャンスが少ないので、こうやって新しい音楽と出会えるのは、非常にやりがいを感じます。耳でも、目でも、舌でも楽しめる、新感覚エンターテインメント(笑)。何か新しい刺激を感じていただけたらいいですね」
S「そうそう。それぞれのジャンルのファンの方に、ぜひ飛び込んできてほしいですね」
というわけで“飛び込んで”みたのがこの写真。理屈抜きで刺激的な楽しいイベントであろうことが、容易に想像できるのでは?
取材・文:宮本 明 写真:中村風詩人
(ぶらあぼ2017年1月号より)
【Profile】
鈴木優人(指揮者/作曲家/ピアニスト/チェンバリスト/オルガニスト)
東京芸大及び同大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。鍵盤奏者・指揮者としてバッハ・コレギウム・ジャパンなど国内外の公演に多数出演。アンサンブル・ジェネシス音楽監督。NHK-FM『古楽の楽しみ』にレギュラー出演。調布音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー、舞台演出、企画プロデュース、作曲とその活動に垣根はない。
TAKAHIRO(振付家/ダンサー)
N.Y.のアポロシアターで開催されたTVコンテストにて史上初の9大会連続優勝を果たし、殿堂入り。雑誌『Newsweek』の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれ、マドンナのワールドツアーにダンサーとしても参加。CM、TV、PV、イベント、歌手などの振付やエクササイズを考案、大阪芸術大学客員准教授を務めるなど、多方面で活躍中。
菊地賢一(パティシエ)
有名洋菓子店やパークハイアット東京にて実績を積み、パークハイアット・パリ・ヴァンドームにて腕を磨く。在仏中、フランス三大コンクール「ガストロノミックアルパジョンコンクール」優勝。 2012年11月、恵比寿にパティスリー「レザネフォール」を開業。16年3月、数寄屋橋東急プラザ銀座HINKA RINKAに銀座店をオープン。
第4回 アート×アート×アート 音楽×ダンス×スイーツ
チェンバロと踊る“お菓子”な世界
2/21(火)19:00 Hakuju Hall (スイーツ付)
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/