三浦一馬(バンドネオン)

“師弟”で聴かせる究極のデュオ

 バンドネオンの若手旗手として活躍めざましい三浦一馬がデビュー10周年を迎える。その記念イヤーに、恩師で世界的奏者のネストル・マルコーニとの共演で、全国ツアーを開催し、古典から現代に繋がるアルゼンチン・タンゴの粋を披露する。
「マルコーニ先生は、スタイルやテクニックなど演奏そのものが素晴らしいのはもちろんのこと、核としてのタンゴをしっかりと持ちながら、シナトラからヨーヨー・マ、近年のアルゲリッチまで様々な演奏家とのコラボを重ねてあらゆるジャンルを発展させています。この人は一体いくつ抽斗(ひきだし)を持っているんだろうと、いつも驚かされます。僕自身が垣根を越えていろんな分野に挑戦しようとするのも、間違いなく先生の影響ですね」
 師弟デュオからピアノを加えたトリオ、伝統のキンテート(五重奏)にさらにバンドネオン1人をプラスした6人編成(東京公演のみ/2公演とも完売)まで、楽曲のアレンジを全て三浦自身で手掛けているのも注目だ。
「他の楽器のスコアも隅々まで徹底的に読み込んでバンドネオンを中心に音楽を作っていくやり方も、先生から学んだことのひとつ。ですから、自分の手で編曲するのは自然な流れです。ただ、先生のパートを書くのは凄く緊張しますが(笑)」
 各分野の一流演奏家からの信頼も厚い山田武彦(ピアノ)らとの共演も楽しみだが、やはり重なり合うバンドネオン2台の音色に期待は高まる。
「バンドネオン1台だけでメロディも伴奏も両方できて、“世界”を作ることはできますが、2台分の厚みを持ったハーモニーが同じ動きをすることで生まれる大きな“うねり”は圧巻で、重奏の醍醐味だと思います」
 プログラムにはマルコーニの自作曲も。
「アレンジによっては伝統的な楽曲がモダンになり、その逆もまたしかり。時代を超えてバンドネオン2台で味わう究極のレパートリーをお届けしたい。特に先生のオリジナル作品はピアソラよりもさらに洗練されていて、より都会的。これまでのタンゴ曲にはないクラシック的な雰囲気やまるでジャズのようなテイストが、バンドネオンの未来を切り開いてくれる気がします」
 7月には井上道義指揮による大阪フィルの定期演奏会で、映画音楽などで知られるルイス・エンリケス・バカロフの「ミサ・タンゴ」にソリストとしても参加する。
「無我夢中であっという間の10年でしたがトップクラスの演奏家の方々をはじめ、出会いに恵まれた自分は本当にラッキーでした。これからも弛まずこの“旅”を続けて行きたいです」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)

ネストル・マルコーニ&三浦一馬
6/9(木)13:30 iichiko総合文化センター(097-533-4004)
6/10(金)19:00 シーハットおおむら さくらホール(0957-20-7207)
6/12(日)17:00 20:00 名古屋ブルーノート(052-961-6311)
6/14(火)19:00、6/15(水)13:30 有楽町朝日ホール(完売)

大阪フィルハーモニー交響楽団 第500回 定期演奏会
井上道義(指揮) 三浦一馬(バンドネオン) 他
7/21(木)、7/22(金)各日19:00 フェスティバルホール
問:大阪フィル・チケットセンター06-6656-4890