神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第312回・第313回定期演奏会

名匠が紡ぐ王道の歴史、俊英が描く動乱の時代


 今秋幕開けの神奈川フィル定期は話題性充分だ。まず9月は、児玉宏が同楽団の定期に初登場を果たす。彼は、ドイツの歌劇場で25年以上のキャリアを積んだオペラ指揮者にして、2008年から音楽監督を務める大阪交響楽団(旧・大阪シンフォニカー響)の名を高めた名匠。大阪響でのレアなプログラムでもおなじみだが、今回はモーツァルトの交響曲第39番とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」という王道プログラムで挑む。これらはドイツ仕込みの得意演目であり、なかでもブルックナーは大阪響で11回の交響曲シリーズを行い、平成21年度文化庁芸術祭「芸術祭大賞」も受賞(第139回定期 ブルックナー:交響曲第6番)した十八番。妥協を許さない音楽作りで知られる彼が、神奈川フィルに新たな輝きを与えることへの期待も大きい。
 10月は、若き常任指揮者として成果を重ねる川瀬賢太郎が、凝った演目を聴かせる。前半は、ショスタコーヴィチの交響詩「十月革命」とヴァイオリン協奏曲第1番。前者は社会主義リアリズム路線の明快な作品で、川瀬の生気溢れる表現が聴きものとなる。協奏曲のソロは三浦文彰。09年ハノーファー国際コンクールの史上最年少優勝以来、順調に成長を遂げる彼が、シリアスな難曲でどう魅せるか? すこぶる楽しみだ。後半はシベリウスの交響曲第5番。後期の祝祭的な名作を川瀬がいかに描くのか?も当然大注目だし、ロシアの十月革命を受けてフィンランドが独立した時期の作ゆえに、前後半で対照される支配国と被支配国の空気感も興味深い。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)

第312回 定期演奏会 9/20(日)14:00 横浜みなとみらいホール
第313回 定期演奏会 10/10(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
http://www.kanaphil.or.jp