新国立劇場《ラインの黄金》キックオフミーティング・レポート

 2015年秋から3年がかりでワーグナー「ニーベルングの指環」4部作上演に取り組む新国立劇場オペラ。今回は、ドイツの伝説的演出家、故ゲッツ・フリードリヒが1996年にフィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)で発表したプロダクションに則り上演される。その第一弾となる序夜《ラインの黄金》のキックオフミーティングが9月3日に行われた。
(取材・文:藤本真由 キックオフミーティングの写真は、撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場、稽古場写真は、撮影:J.Otsuka/Tokyo MDE)

 主要キャスト及びスタッフが結集、稽古をスタートさせる顔合わせで、まずは新国立劇場オペラ芸術監督で今回の指揮を担当する飯守泰次郎が長旅をねぎらう。

左)シモーネ・シュレーダー 右)飯守泰次郎
左)シモーネ・シュレーダー 右)飯守泰次郎

 次いで、主要7役のうち劇場に出演経験のある3人が挨拶。ヴォータンを歌うユッカ・ラジライネンは、「自分が初めてヴォータンを務めたのがこのプロダクション。優れた心と知性で創り上げられている」とコメント。今回の4部作で主役級テノール4役すべてを務めるローゲ役のステファン・グールドは、「この大プロジェクトに参加できるのが楽しみ」と意気込みを。フリッカを演じるシモーネ・シュレーダーも、これで3回目となる招聘に謝辞を述べた。
ユッカ・ラジライネン
ユッカ・ラジライネン
ステファン・グールド
ステファン・グールド
シモーネ・シュレーダー
シモーネ・シュレーダー

 続いては、演出補のイエレ・エルッキラが、「美しく、エレガントで、抽象的でもあり、時を超越した魅力のあるプロダクション」と作品のコンセプトを説明。登場人物の説明では、ドンナーは「ボクサーみたいな恰好」、フライアは「若さの女神で、彼女のリンゴがないと神々は死ぬが、この作品では彼女の乳房がリンゴになっている」、アルベリヒは「この世界で自分の居場所を探している人物」等々、キーワードが飛び出す。情景説明では、オープニング、この世界に対するヴォータンの眼差しを表すセットが、新宿駅西口広場にある「新宿の目」を思わせる。ここでのアルベリヒの登場の情景は、4部作最後の《神々の黄昏》のエンディングにもつながっているとのこと。また、全作通じて三角形が象徴的に登場するという。
イェレ・エルッキラ
イェレ・エルッキラ

 稽古を早く始めたくてうずうずしていたエルッキラは、開始早々、陽気にエネルギッシュに、ラインの娘たち3人とアルベリヒに次々と指示。床に垂れ下がるほど長いスカーフを身にまとった娘たちに、スカーフさばきについて、「激しくなく、エロティックに」等、細かく注文を出す。スカーフをなびかせ、コケティッシュに戯れる娘たちはなるほどエレガントだ。そして、足取り重くやって来て、ヴォータンの“目”に振り返るアルベリヒーー。印象的なオープニングに、10月1日の初日がますます楽しみになってきた。
イェレ・エルッキラとラインの娘たち(左から増田のり子、池田香織、清水華澄)
イェレ・エルッキラとラインの娘たち(左から増田のり子、池田香織、清水華澄)
中央)トーマス・ガゼリ
中央)トーマス・ガゼリ

■新国立劇場2015/2016シーズン
ワーグナー/楽劇「ニーべルングの指環」序夜《ラインの黄金》
全1幕【ドイツ語上演/字幕付】
2015/10/1(木)19:00 、10/4(日)14:00 、10/7(水)14:00 、10/10(土)14:00 、10/14(水)19:00 、10/17(土)14:00
オペラパレス

■指揮:飯守泰次郎
■演出:ゲッツ・フリードリヒ
■美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ
■照明:キンモ・ルスケラ
■演出補:イェレ・エルッキラ

■出演
【ヴォータン】 ユッカ・ラジライネン
【ドンナー】 黒田博
【フロー】 片寄純也
【ローゲ】 ステファン・グールド
【ファーゾルト】 妻屋秀和
【ファフナー】 クリスティアン・ヒュープナー
【アルベリヒ】 トーマス・ガゼリ
【ミーメ】 アンドレアス・コンラッド
【フリッカ】 シモーネ・シュレーダー
【フライア】 安藤赴美子
【エルダ】 クリスタ・マイヤー
【ヴォークリンデ】 増田のり子
【ヴェルグンデ】 池田香織
【フロスヒルデ】 清水華澄

■管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

S席27,000円 A席21,600円 B席15,120円 C席8,640円 D席5,400円
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999

新国立劇場 http://www.nntt.jac.go.jp/opera/dasrheingold/