【SACD】J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ(全曲)/周防亮介

 サー・ロジャー・ノリントンは指揮するオーケストラの音色を「ピュア・トーン」と表現したが、周防亮介のバッハを聴いてその言葉を思い出した。当盤は「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」全曲録音の第2集で、3曲のパルティータを収録。完全ノン・ヴィブラートでモダン楽器を弾く。持ち前の美音が存分に鳴り響くが、それのみが目的ではない。つまり、いかにバッハを「ピュア」に響かせるか。装飾に頼らず細やかにニュアンスをくみ取ってゆくアプローチで、急速楽章は変化に富み、緩徐楽章では呼吸深く歌の持続を支えてゆく。シャコンヌの中間部はオルガンのように荘厳。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2025年12月号より)

【information】
SACD『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ(全曲)/周防亮介』

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番〜第3番

周防亮介(ヴァイオリン)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00894(2枚組) ¥4180(税込)


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。