【SACD】シューマン:交響曲全集/山下一史&愛知室内オーケストラ

 山下一史のシューマン交響曲全集は、作曲家のもつポエジーのために、通常の交響曲の形式や管弦楽法からはみ出してしまうところを巧く捉えている。同時に若いオーケストラから、しなやかな感性と、熱く燃える心をたくみに引き出している。第1番では、新しく交響曲に挑戦するシューマンの意気込みと春の息吹が伝わってくる。第2番は緩徐楽章の美しさはもちろんだが、スケルツォも聴きものだ。角張ったリズムとスピード感。トリオの優雅なレガートとの対比で一層際立つ。第3番「ライン」の雄大な拡がり、第4番の主題関連による緻密な構築など、とても面白く聴ける。見事なシューマンだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年11月号より)

【information】
SACD『シューマン:交響曲全集/山下一史&愛知室内オーケストラ』

シューマン:交響曲第1番「春」~第4番(1851年改訂版)、歌劇《ゲノフェーファ》序曲、「マンフレッド」序曲

山下一史(指揮)
愛知室内オーケストラ

妙音舎
MYCL-00065(2枚組) ¥4950(税込)