リッカルド・ムーティ(指揮) ローマ歌劇場 2014年日本公演

ムーティでヴェルディ・オペラの神髄を体験する

 ヴェルディ生誕200年に当たる今年は、ヴェルディにかかわる演奏や講演など、さまざまな企画が催されている。関東への台風接近が心配された10月末の土曜日、東京のBunkamuraオーチャードホールで開催された『ムーティ、ヴェルディを語る』では、リッカルド・ムーティ自身の言葉によって“生涯の作曲家”として取り組むヴェルディへの深い思いが語られた。
 ムーティは、作曲家の書いた楽譜通りに演奏する“原典主義”を貫くことで知られている。慣習的に定着したものと異なる演奏には、批判を伴うこともある。ムーティは言う。「楽譜に忠実というのは、音の正しさという意味ではありません。そこに書かれている音の意味を考えなければならないということです。ヴェルディはこのドラマがどうあるべきか、演出や心情にいたるまで、すべてを音楽に書いています。ヴェルディの音楽は劇場なのです」
 このムーティが、目下、真のヴェルディ・オペラの上演を目指す場所とするのが終身名誉指揮者を務めるローマ歌劇場。終身名誉指揮者というポストは、「音楽のことに専念するため」に用意された。正式な就任は2011年だったが、低迷気味だったローマ歌劇場に新たな生命をもたらしてほしいとの要望がムーティにあったのは2006年のことだった。
 2014年春の日本公演を前に、ムーティは「ローマ歌劇場はいま、イタリア・オペラでは他の劇場にはない素晴らしさがある」と公言する。
 久々に日本で披露されるムーティ指揮のヴェルディ・オペラは、イタリア統一150周年にあたる2011年に新制作された《ナブッコ》と、2012年に新制作された《シモン・ボッカネグラ》。「ローマ歌劇場のオーケストラや合唱団には、ほかでは失われつつあるアイデンティティ、表現力、音色がある」と言うムーティの自信あふれる2作だ。《ナブッコ》では、イタリア人が第二の国歌としても愛する合唱曲が有名だ。人気イタリア人バリトンのルカ・サルシ演じる豊かな表現力によるナブッコ、ドミトリー・ベロセルスキー演じる崇高さに満ちた祭祀長ザッカーリア、タチアナ・セルジャンが驚異的な歌唱力と表現力で演じるアビガイッレ、今秋のミラノ・スカラ座日本公演《ファルスタッフ》でも清らかな青年の愛情を聴かせたアントニオ・ポーリのイズマエーレ、ソニア・ガナッシ演じる凛とした若き娘フェネーナと、すでにローマでの熱狂を生んだ強力キャストが日本でも実現する。
 一方、《シモン・ボッカネグラ》を手がけるのはローマ歌劇場での公演が初めてとなった理由を、「このオペラに必要な歌手が揃うのを待っていた」と言うマエストロ。《シモン・ボッカネグラ》は、今日の味方は明日の敵…といった、複雑な状況と心情が交錯するオペラだけに、歌手たちには単に歌唱力だけではなく、あらゆる表現力においてもムーティの厳しい目が光る。苦悩するタイトルロールのジョルジョ・ペテアン、宿敵フィエスコ役のリッカルド・ザネッラート、策略家パオロ・アルビアーニ役のマルコ・カリア、純粋さと愛に生きるガブリエーレ・アドルノ役のフランチェスコ・メーリといった初演キャストに加え、日本公演にはアメーリア役にバルバラ・フリットリを選んで、こちらも万全といったところ。
 「オペラはイタリアの文化」と考え作品に向き合うムーティ。このマエストロから、「本物を見分ける力がある」と称賛されている日本の聴衆としては、ムーティが心血を注ぎ作り上げるローマ歌劇場のヴェルディ、イタリアの文化をあらわす“本物”に、向き合わなくては!
文:吉羽尋子
(ぶらあぼ2013年12月号から)

*配役変更*
《シモン・ボッカネグラ》フィエスコ役
リッカルド・ザネッラートからドミトリー・ベロセルスキーに変更されました

《ナブッコ》
★2014年5月20日(火)・東京文化会館、30日(金)、6月1日(日)・NHKホール Lコード:36110
《シモン・ボッカネグラ》
★2014年5月25日(日)、27日(火)、31日(土)・東京文化会館
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
ローマ歌劇場 2014年日本公演オフィシャルサイト http://roma2014.jp