萩原麻未(ピアノ)

人気ソリストと室内楽で織りなす新企画のコンチェルトシリーズが横浜全域で始動

(c)Marco Borggreve

 現在休館中の横浜みなとみらいホールだが、その間にも様々なコンサート企画などを用意して、活動を行っている。今回ご紹介するのは「横浜18区コンサート」だ。「俊英ソリストと弦楽五重奏で聴くピアノ/ヴァイオリン協奏曲」というサブタイトルが付いているとおり、今年9月から2022年3月にかけての第Ⅰ期には萩原麻未、福間洸太朗、實川風(以上ピアノ)、山根一仁、大関万結(以上ヴァイオリン)という、いま日本で最も活躍している旬の奏者たちがソリストとして出演。活動拠点や定期演奏会の開催地として横浜と縁の深いオーケストラのメンバーによる特別編成の弦楽五重奏団(2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)が共演し、横浜市の18区それぞれにある会場でコンサートを開催する(第Ⅰ期は全10区)。

 その第1回目のコンサートに出演するのが萩原麻未。パリ国立高等音楽院で学び、2010年に日本人として初めてジュネーヴ国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝するなど、ヨーロッパでの活躍も華々しく、日本国内でも数々のオーケストラとの共演、リサイタルなどを重ねてきた。13年には横浜市招待国際ピアノ演奏会に出演するなど、横浜、みなとみらいホールとも関わりが深い。

 萩原が9月に出演するのはフィリアホール(青葉区)、金沢公会堂(金沢区)の2ヵ所で、演奏する作品はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番である。共演は横浜シンフォニエッタのメンバーによる弦楽五重奏だ。

「この協奏曲は大好きな作品で、しかも弦楽五重奏版では弾いた経験もなく、取り組むことのできる機会ということで、とても嬉しい気持ちです」

 弦楽器のシンコペーションのリズムに乗って、ピアノが呟くように始まる異色の協奏曲として知られるのがこの第20番だ。

「モーツァルトはたった2曲しか短調のピアノ協奏曲を書いていません。第20番はニ短調ですが、それはオペラ《ドン・ジョヴァンニ》にも使われた調性で、この協奏曲もどこかデモーニッシュな雰囲気で始まります。でも、第2楽章は穏やかなイメージに溢れ、終楽章はまた短調になりますが、最後は長調に転じて終わるという、とても変化のある作品。弦楽五重奏との共演では、より繊細にモーツァルトの世界が表現できそうな気がしています」

 横浜シンフォニエッタは山田和樹を音楽監督に擁し、横浜を拠点に活動するグループだ。
「これまでにも何度かオーケストラとは共演したことがありますが、今回は個々のメンバーと室内楽的な会話ができると思います。そうしたやりとりを通して、私もこの協奏曲の新しい魅力を発見したいと思っています」

 協奏曲の前には、弦楽五重奏による「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」も演奏される。自宅から近いコンサート会場で聴く協奏曲は、より身近な存在として、新しい表情を見せてくれるだろう。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2021年8月号より)

横浜みなとみらいホール出張公演
横浜18区コンサート 第Ⅰ期(2021年9月〜22年3月)
萩原麻未(ピアノ) × 横浜シンフォニエッタメンバー
2021.9/14(火)15:00 青葉区民文化センター フィリアホール 
9/16(木)15:00 金沢公会堂
問:横浜みなとみらいホール仮事務所チケットセンター 045-682-2000
https://mmh.yafjp.org/mmh/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。