シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

大いなる喜びへの“参加”

 いまカンブルラン&読響が面白い。現代ものを巧みに組み合わせたプログラミングと色彩的で緻密な演奏は、エキサイティングかつ示唆に富んでおり、毎回足を運ぶ甲斐がある。今年1月も、ラヴェルの名作でカラフル&ピュアな音楽を聴かせる一方、ガブリエリ、ベリオ、ベルリオーズという類のない演目の定期では、楽器配置の妙味(行ってこそわかる)を交えた快演で聴衆を唸らせた。
 次なる公演は、新シーズンの幕開けとなる4月。今回も興味津々のプログラムだ。まずはシェーンベルクのレアな初期作品「弦楽のためのワルツ」。古きウィーン情趣漂う小ワルツが連なった調性音楽の佳品を、(おそらく)小編成で小粋に聴かせてくれる。2曲目はリストのピアノ協奏曲第1番。2010年7月以来の共演となるロシアン・ピアニズムの継承者ニコライ・デミジェンコの、スケール感と美音相持つソロはもちろん、迫力十分のバックを緊密に仕上げるカンブルランの手腕に要注目だ。後半は、マーラーの交響曲第4番「大いなる喜びへの賛歌」。カンブルランのマーラーといえば、昨年3月の第6番「悲劇的」が忘れ難い。精緻な彫琢で透明な緊迫感を創出したあの演奏は、清新な魅力に溢れていた。今回は、マーラーの交響曲中もっとも室内楽的で精妙な第4番ゆえに、カンブルランの特長と読響の機能全開の美演は必至。ウィーンやザルツブルク等で活躍し、現代ものも十八番のソプラノ、ローラ・エイキンも、天上的な美声で華を添える。
 カンブルランの常任指揮者就任5年目でコンビも熟す新シーズンは、最初から目を離せない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年3月号から)

第536回定期演奏会
★4月17日(木)・サントリーホール

第7回読響メトロポリタン・シリーズ
★4月19日(土)・東京芸術劇場

問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp