河原忠之(ピアノ) リサイタル・シリーズ2014  〜歌霊〜第6回 フランシス・プーランクⅡ

千変万化の音のパレット

 河原忠之が、特に多くの声楽家たちが信頼を寄せる、類いまれなアンサンブル・ピアニストであることは、歌好きのファンならご承知だろう。年間のステージ数は100を超えるというからすごい。柔和な笑みを湛えた大柄な体躯から繰り出す音のパレットは千変万化、自由自在。音楽のスタイルを的確に捉え、ときにテキスト以上に「言葉」を持った音たちが詞の情景や情感を描き出す。「伴奏」という言い方に違和感をおぼえる向きもあるかもしれないが、誤解を怖れずに、あえて「名伴奏ピアニスト」と呼びたい。
その河原が2011年から続けているリサイタル・シリーズが《歌霊》。ピアニストのリサイタルといえば普通はソロ・コンサートだろうが、毎回歌手たちを招いて歌曲を中心に据えている、河原らしい企画。「歌霊」とは、「言霊」と「音霊」が結びついた歌曲の世界、という意味だそう。毎回一人の作曲家に焦点を当てており、その第6回はプーランク特集第2弾。羽根田宏子(ソプラノ)と林美智子(メゾソプラノ)が、「エリュアールの詩」「反戦と詩人」「フランスの田舎を歌う」と3つのブロックに分けたプーランク歌曲を歌う。また、前回(2011年12月)絶賛を集めた村田健司朗読の「ババールの物語」も再演。村田はバリトン・レジェとしてプーランクの全集録音もあるエキスパート。開演に先立つプレトークも担当する。「歌」「伴奏」「プーランク」と、さまざまな方向から幾重にも興味が広がるコンサートだ。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2014年2月号から)

★3月28日(金)・東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
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