歌の花束をおとどけします
オペラの舞台からソリストと国内外で活躍中の可憐なソプラノ、小林沙羅が待望のデビュー・アルバム『花のしらべ』をリリースする。
「様々な作曲家の花にまつわる歌曲を集めてみて、今回はドイツ語・イタリア語・日本語に絞って、花束を作るように色合いなど組み合わせを考えながら選びました。現在の私らしさが出せるようなデビュー盤にしたかった」
なかでもシューマンは多めに4曲、R.シュトラウスも女性の個性を花にたとえた「乙女の花」の4曲を収録。
「どちらも大学院修了の節目にとりあげた思い入れのある作曲家です。シューマンはピアノと一緒に彼の世界を穏やかに作り上げていく感じ。強引さがなく、しみじみとした味わいが好き。単独でも素晴らしいけれどまとめて歌うともっと素敵。いつか『ミルテの花』や『リーダークライス』を通しで録音してみたいと思います。一方、R.シュトラウスは一曲一曲がオペラティックで華やかなところが魅力なのですが、この4曲ともそれぞれに個性的で表現も饒舌で、まとめて歌い上げるのはとても難しい。いろんな意味で対象的な二人ですね」
トスティやレスピーギのイタリア的な空気感も見事だが、ウィーンで20世紀初頭に活躍したマルクスも聴きどころ。
「日本ではそれほど馴染みのない作曲家ですが、オーストリアでは愛されていて、ウィーンの先生にもすすめられました。いい曲がたくさんあって、これもバラに関するとてもドラマティックな曲。日本の皆さんにぜひ紹介したくて」
日本歌曲では同じ加藤周一の詩による「さくら横ちょう」を抒情的な中田喜直版と妖艶な別宮貞雄版で収録。
「どの曲もそれぞれの言語が持つ特性と深く結びついているので、自然に歌い方は変わってきます。特に日本の歌はまだ言葉も満足に喋れない頃から好きでずっと歌ってきたものなので、私には声楽的にも違和感がないです」
最後を飾るのも日本語歌唱で、“時代の歌”ともいえる「花は咲く」と彼女自身が書き上げた「えがおの花」。
「『花は咲く』は声楽的なアプローチをしつつも、あまり表現過多にならないようにレコーディングでは工夫しました。オリジナルの『えがおの花』は自分を見つめ直していた時期に、内面の想いが素直に外に出たようにして生まれた曲です」
2014年も出演が目白押し。3月28日には紀尾井ホールで本作からのプログラムでリサイタルを開く。こちらも注目だ。
「歌いたい作品や役柄はたくさんありますが、無理をせず年齢と共にレパートリーを拡げていけたらいいですね」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2014年3月号から)
★3月28日(金)・紀尾井ホール
問:Kトレーディング03-6418-1008
【CD】『花のしらべ』
日本コロムビア
通常盤 COCQ-85048 ¥2800+税
初回限定盤(写真)(カラー36Pフォトブックレット、特典CD付BOX) COCQ-85047 ¥4500+税