俊英が才能と意欲をこめた名スコッチに酔う!
気鋭指揮者中の最注目株ロビン・ティチアーティが、2月に待望の来日を果たす。1983年英国生まれの彼は、すでにコンセルトヘボウ管、ロンドン響、スカラ座、MET等々に客演している。2008年には25歳でザルツブルク音楽祭日本公演《フィガロの結婚》の指揮者に抜擢され、14年からはグラインドボーン音楽祭の音楽監督に就任する。
今回は、09年から首席指揮者を務めるスコティッシュ・チェンバー・オーケストラ(SCO)を率いての来日。まずはサラステやボルトンが歴任した名楽団のシェフ就任の経緯から聞こう。
「私はSCOのツアーに客演し、素晴らしい演奏家たちと共演したことを実感しました。数々のコンサートで我々は音楽的なアイディアを共有し、お互いを理解してきました。そしてツアーの翌週、就任を打診されたのです」
就任には、長年SCOに関り、2010年に死去した名指揮者・マッケラスも後押ししたという。彼はその期待に応えて、強固な信頼関係を築き、充実した活動を行っている。
「SCOは今、『英雄』交響曲をメインにした、プロムス、エディンバラ音楽祭等の夏のツアーを終えたところです。そしてベルリオーズの歌劇《ベアトリスとベネディクト》を皮切りにシーズンが始まり、今後シューマンの交響曲集の録音も行います」
SCOに寄せる期待も大きい。
「SCOは、公演を何よりも大切にし、フレージング、サウンド、アーティキュレーションといった音楽的側面を熟慮しています。我々は、美しくて意欲的な音楽をすべての聴衆に届けるべく、スコアを深く研究し、よりよい解釈を目指しています。またレパートリーの面でも常に新しい方向を探求しており、例えば今シーズンはリゲティ、来シーズンはマーラーや現代作品を取り上げます」
今回の日本ツアーは、地元ゆかりのメンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」、ベートーヴェンの「運命」、マリア・ジョアン・ピリスをソリストに迎えた、シューマンとショパン(2番)の協奏曲という王道プログラムだ。
「SCOの演奏を初めて聴く皆様に深い感動を与えたい。ベートーヴェンとシューマンは今我々の中心演目です。それにピリスの美しい演奏を聴くと、必ずや音楽の世界に引き込まれることでしょう! 彼女とはモーツァルトの協奏曲で共演しましたが、まるでピアノのマジシャンのよう。私は彼女のピアノに対する高潔さに感銘を受けています」
若くして第一線に立つ彼だが、目標を聞くとこう語る。
「音楽は自分の人生であるとともに、最も深いところにある力を呼び覚ますもの。私は、指揮者として必要なことすべてを日々くみ取り、努力していきたいと思っています」
来たる手兵との公演で、その才能にぜひ触れてみたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年12月号から)
ロビン・ティチアーティ(指揮)
スコティッシュ・チェンバー・オーケストラ
共演:マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)
曲/メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」/シューマン:ピアノ協奏曲(2/15)
/ショパン:ピアノ協奏曲第2番(2/17, 2/18)/ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
★2月15日(土)・愛知県芸術劇場 Lコード:48161
17日(月)・兵庫県立芸術文化センター Lコード:53983
18日(火)・サントリーホール
総合問合:ミュージックプラント03-3466-2258
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